2011年5月3日(火)「しんぶん赤旗」
解説
B型肝炎訴訟
「除斥期間」の見直しを
原告団の一致した要求は「被害者全員の一律救済」でした。
これに立ちはだかったのは国の「除斥期間」を口実にした被害者切り捨て策でした。
B型肝炎は、感染から持続感染、発症、慢性肝炎、肝硬変、肝がんと一定の年月をかけて進行する病気です。感染していることさえ知らずに過ごすこともあり、国が予防接種で国民に多大な感染被害を出したことを長期に隠していたこともあって提訴するまでに20年以上を経過した被害者もいます。民法で損害賠償請求ができる期間(除斥期間)を20年と定めているために国はこれを理由に被害者の切り捨てに奔走しました。
「より長く苦しんでいる被害者がより低い和解金しか受け取れないことは不条理であり不正義です」と原告団声明は、「除斥期間」を理由にした和解金の差別を批判しています。「除斥」については、すでに法制審議会などで廃止や変更について検討されています。
原告団は、提訴から13人の原告が亡くなっていることや肝がん、肝硬変の被害者もいることから「早期全面解決」を国に迫ってきました。
国内のB型肝炎感染者・患者は120万人。半数は予防接種による被害者とみられています。
原告団は声明で「東日本大震災が起き、立法を含む政治による解決の先行きが極めて不透明と」なったことを指摘しています。国の「財政破綻」のキャンペーンもあって、損害賠償金請求の声がかき消される雰囲気があります。「二度の苦渋の決断」を迫られました。(菅野尚夫)