2011年5月2日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
日本国憲法 あす施行64年
9条生かす 草の根から
日本国憲法は5月3日に施行64周年を迎えます。改憲の動きがかつてなく強まった2004年、「九条の会」は発足しました。7年間で全国で7500を超え、憲法9条、25条など国民の生命、平和を守ることを「草の根」で活動しています。そんな「9条の会」のなかから、岐阜県中津川市からのリポートと、東京都新宿区の活動です。
対話を大事に 若い人にも
住民過半数が署名
岐阜・中津川市付知町 つけち九条の会
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岐阜県中津川市付知(つけち)町の「つけち九条の会」は、憲法9条の「戦争を二度としない」という精神を、圧倒的多数の町民に理解してもらおうと活動しています。2005年9月の結成いらい、「憲法9条を守る」草の根署名をとりくみ、昨年9月に念願の「住民過半数」(現在、3270人)に達しました。
付知町は05年2月に中津川市に合併し、南北に流れる付知川沿いに広がる小さな町。人口は6404人、付知峡は秋の紅葉で有名です。
110人の呼びかけ人には、元町議会議長、元町教育長、元町議会議員、寺の住職、元校長さんからごく普通の町民の皆さんが、思想・信条、党派を超えて参加しています。会の活動は、「学習」と「対話」を両輪にしています。四つの支部ごとに小集会を行い「戦争体験の話」や寺の住職さんの話を聞き、時には花見で親睦をはかります。
「国民投票法」、「沖縄基地問題」など憲法9条に関わる問題が生じたときには、大学の先生などを講師に学習をしています。そして、1年間の活動の集約として「大集会」を取り組みました。
今年は6月19日に、九条の会・事務局長の小森陽一東大教授を招き、「署名の住民過半数達成記念大集会」を計画しています。
署名活動に特に熱心に取り組んでいるのは、約250人の会員がいる「年金者組合・一八(いっぱち)会」(毎月18日に集まる会)です。自分の戦争体験をもとに自然体で対話をし、署名を日常的に集めています。
その一人であり、東京大空襲の体験者でもある加地絹江さん(呼びかけ人代表・94歳)は、いいます。
「まず、私の町内会を一軒一軒、署名を持ってまわりました。それから親戚・知人・友人と広げ、病院や買い物先で出会う人にとあらゆる機会に署名をお願いしました。暑い夏に汗を拭きふき坂道を歩き、畑仕事をしている方にお願いしたりもしました。もっと多くの署名を取るまで、まだまだ死ねない」
いままでに数百人の署名を集めました。
「つけち九条の会」は恵那(えな)地区で昔から大切にしている、住民一人ひとりと「対話し、つながる」ことを大事にしています。未曽有の大震災のもと、今後も対話を若い人たちへとひろげ活動の担い手をつくりながら、住民の7割以上の署名を追求していきたいと思っています。(野村正治・つけち九条の会事務局長)
染色・空襲体験・音楽・落語…
文化の街 毎月催し
東京・新宿区 落合・中井九条の会
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「人間の心を豊かにする文化は平和でなければ育たない」―。
東京都新宿区の落合・中井九条の会は憲法9条を守り、生かそうと地域に根ざした行事、つどいを活発に進めています。
この落合・中井地域には、作家の林芙美子、宮本百合子や画家の佐伯祐三など芸術、文化人が多く住んだ「文化村」の伝統があります。神田川と妙正寺(みょうしょうじ)川の落ち合う場所という地名のとおり、清流が育んだ「染物の里」として人情のあふれる地域です。
同九条の会は大江健三郎、故井上ひさしさんらが呼びかけた「九条の会」発足の翌年、2005年5月29日に結成。ことし6年を迎え、コツコツと毎月1回の行事をこれまで70回も開いてきました。地域の人びとにもチラシやブログでよびかけています。
行事のテーマも憲法だけでなく多彩です。地元の染色工房訪問や東京大空襲の体験、そして音楽から落語まであります。「会」の代表をつとめる増島宏さん(法政大学名誉教授)の時事問題の講義は参加者の人気を集めています。
終戦直後から下落合に住み続ける木村隆さん(69)は同会事務局長。会社員時代に沖縄勤務の体験もあり、退職後、会のチラシを見て「なにかしなければ」と参加しました。
「各分野からの多彩な講演は参加者の心を豊かにします。みんな平和憲法につながっています。一人ひとりの意見を大切にし、事務局でよく議論することが“持続”への秘けつかと思います」
「九条の会」賛同署名の先頭に立った本葉カツ子さん(69)は、大震災・福島原発事故の苦難に心を痛めます。
本葉さんは「憲法9条を変えてはいけない。国民が生命を守り、幸福に生きるために憲法25条の生存権もふくめた各条項を、いまこそ実現させなければならない。この思いを大きくひろげていきたい」と、きっぱり話します。
同会は71回目の「尺八演奏・宮田耕八朗さんと創作落語・寝床家道楽さん」のつどいを15日午後2時から、落合第二地域センターで開きます。(小高平男)
大震災復興は憲法の理念で
日本国憲法は3日、施行64年を迎えます。憲法にはアジア太平洋戦争の惨禍を繰り返さない思い、核兵器廃絶の切望がこめられ、国民主権と国家主権、恒久平和の原則、基本的人権、議会制民主主義、地方自治の原則が貫かれています。国民の平和と安全、暮らしと命を守る基本となってきました。
今日、東日本大震災と原発被害の現実から、憲法の理念に立った被災者の支援、復旧・復興が求められています。
憲法制定直後から国民と改憲勢力とのせめぎあいが続き、今日民主党政権下で、衆議院の比例定数削減の動きがその焦点の一つとなっています。埼玉土建のみなさんは、被災者救援に全力をあげる一方で、この比例定数削減問題も重視し、昨年来、学習会や街頭宣伝などを進め、約7万人分の署名を集めています。
今ほど、憲法を生かす国民的な世論と運動をゆるぎないものにし、明文、解釈さまざまな形での改憲の策動を許さず、9条を守ることが求められているときはありません。(平井正・憲法会議事務局長)