2011年3月30日(水)「しんぶん赤旗」
公的病院地域守る 仙台社会保険病院
透析患者の命つなぐ
37施設から 震災直後の3日、毎日600人
東日本大震災で、公的病院が地域の医療機能を守って奮闘しています。仙台市の仙台社会保険病院は、震災から3日間は24時間態勢で、人工透析患者を受け入れました。(田代正則)
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震災によって、広い地域で人工透析に必要な電気と水の供給、設備に大きな被害が出ました。定期的な透析を受けられないことは、命に関わります。
重油と給水確保
宮城県内の腎泌尿器疾患の最終拠点病院となっている同社会保険病院は、非常用自家発電の重油と給水を確保し、震災翌日の12日から、透析が不可能となった県内37施設の患者を受け入れました。
同病院での透析は、通常1日あたり数十人〜100人程度のところ、12日から3日間は、毎日600人以上にのぼりました。
同病院腎疾患臨床研究センターの佐藤壽伸センター長は、「宮城県の患者にとって、私たちが最後の頼み。ギブアップするわけにはいかないと、みんなが思っていた」と振り返ります。
患者を背負って
全職員が、止まったエレベーターの代わりに、患者を背負って階段を昇降するなど協力して乗り切りました。
臨床工学技士の男性(27)は、「患者も順番待ちでストレスと不安を抱えていた。自分たちより大変な人たちを思い、頑張った」と話します。
民間に売却方針
現在は、電気・給水が徐々に復旧し、他施設からの透析患者は20人ほどです。落ち着いた23日からは、津波被害を受けた宮城県南三陸町にエコー車とレントゲン車を派遣しています。
社会保険病院や厚生年金病院は、民間売却の方針が出され、昨年、公的な医療機関として存続させる法案が廃案になったことから、住民から不安が出ています。
南三陸町の医療支援から帰ってきた同病院事務局長の井上嗣也氏は、「存続の受け皿が決まっていない状態だが、この病院の地域医療に果たす役割は大きい」と強調しました。
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