2011年3月24日(木)「しんぶん赤旗」
薬害イレッサ 国を断罪
東京地裁、「安全確保の指導不十分」
肺がん治療薬の抗がん剤「イレッサ」を投与されて、致死的な副作用、間質性肺炎を発病して死亡した患者の遺族4人が輸入販売元のアストラゼネカ社(大阪市、ア社)と国に約7700万円の損害賠償を求めた薬害イレッサ東日本訴訟の判決が23日、東京地裁(松並重雄裁判長)でありました。
松並裁判長は、被告ア社に製造物責任法の「指示・警告上の欠陥があった」こと、国には「承認時、安全確保のための指導が不十分だった」として、次女を亡くした近澤昭雄さん(67)ら2人に国とア社が連帯して総額1760万円の賠償金を支払うよう命じました。原告団と弁護団は国の責任を認めた画期的な判決と評価しました。
「イレッサ」は、世界に先駆けてわずか5カ月でスピード承認販売されました。発売後2002年7月から12月の半年で180人、昨年9月末現在、819人が間質性肺炎で死亡しています。
松並裁判長は、争点の国の責任について「添付文書に当該医薬品の安全性確保のために必要な記載が欠けているときには、そのような記載をするよう指導するなどの行政指導を行う権限を行使する責務がある」と指摘。「その権限の不行使は国家賠償法上違法になる」と、国の責任を断罪しました。
添付文書に間質性肺炎が致死的になりえるものと記載された後にイレッサを服用した原告の請求は棄却されました。
原告代表の近澤さんは、「身震いするような歴史的勝利です」とうれし涙を流しました。
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