2011年3月5日(土)「しんぶん赤旗」
薬害イレッサ
学会声明 操作した厚労省文案
和解勧告ねじ曲げる
薬害イレッサ訴訟をめぐり厚労省官僚が医学会などに和解勧告を批判する声明を出させる文案を作り要請していた問題で本紙は4日、この文案を入手しました。
官僚の作った文案は「日本の医療の進展を阻むような内容」「医薬品の開発期間がむやみに延長」「過去の薬害とまったく異なる」「新たな抗がん剤の開発を断念する」などとなっています。
東京、大阪両地裁が示した医師などへの説明添付文書の不十分さを欠陥だとした「和解勧告及び所見」をねじ曲げて批判しています。
日本医学会、日本臨床腫瘍学会、日本肺癌学会の見解は、タイトルが厚労省官僚の作った文案とまったく同じで「肺がん治療薬イレッサの訴訟にかかる和解勧告に対する」見解となっています。
内容も文案同様に「哀悼の意」を表明し、筋違いな「開発意欲を無くす」「開発および承認までの期間がさらに延長する危険をはらむ」「新薬へのアクセスを阻害する」などと厚労省文案をなぞっています。国立がん研究センター理事長の見解も「すべての患者さんにとって不利益」「薬害被害とは全く異なる」「医療崩壊になる」などと「和解勧告」を全否定して、厚労省の主張を代弁しています。
薬害イレッサ訴訟原告団・弁護団は、国と関係学会、被告アストラゼネカとの間にいかなる接触があり、誰がそれに関与していたのかを、迅速かつ徹底的に調査することを求めています。
日本医学会の会長は厚労省官僚の要請をうけて和解勧告に反対する見解を発表したことを認めています。
身内の検証は不当
薬害イレッサ訴訟で厚生労働省は4日までに、日本医学会の高久史麿会長に和解勧告に懸念を表明するよう文案を作って働きかけをしていた問題について検証チームを設置しました。
検証チームのメンバーは、同省の小林正夫政務官、足立信也前政務官、同省監察本部外部有識者の柳志郎弁護士の3人。これにたいして薬害イレッサ訴訟原告団・弁護団は、「厚生労働省の組織的関与が疑われる事案であり、同省内部のチームによって調査するのは不当である。医学界に対する調査が重要な意味を持つことを考慮すると、医学界と接点を持つメンバーは加わるべきではない」とする見解を明らかにしました。