2011年3月3日(木)「しんぶん赤旗」
主張
入試問題ネット投稿
不正で一生に悔いを残すな
まじめに勉強した受験生をあざ笑うかのような卑劣な行為です。京都大学など4大学の入学試験で、試験時間中にインターネットの質問コーナーに問題が流出し、解答が求められていました。関与が疑われる受験生が浮上しています。
行為そのものの徹底した解明と再発防止策が必要です。同時に、携帯電話を使えばだれでも、どんな試験でも、同じような不正を行えることをふまえ、根本的な対策を考える必要があります。
携帯でカンニング
監督官が厳しく監視しているはずの試験会場から、どうして試験問題を外部に流出させることができるのか。はっきりしているのは、試験会場から問題文を流出させ、インターネット上に投稿することで正答を得ることが可能だということです。
今回の入試不正では、投稿は、試験問題そのものを見なければできない正確なものでした。試験会場で知らされた問題の訂正も反映しています。試験開始から数分後には投稿され、その十数分後には回答が寄せられています。
試験会場で長文の問題を携帯電話のメールに打ち込んでいれば、監督官が不審に思います。多機能の携帯電話で、問題文を写真や映像の形で外部に送り、協力者がそれを投稿するという可能性もあります。手口を徹底解明することは、再発防止のための前提です。
見逃せないのは、携帯電話の普及や発達とともに、この種の不正が増えていることです。
韓国では2004年、日本のセンター試験にあたる大学修学能力試験で300人以上が摘発される大がかりなカンニングが起きました。優秀な生徒が試験会場から解答を携帯電話のメールで送り、それが多数の受験生に転送されていました。携帯電話が普及しなければ起きなかった不正です。
日本でも、一橋大学の2002年夏の学期末試験で、携帯電話のメールを使った集団カンニングが発覚しました。同大では現在、試験会場での携帯電話使用を一切禁止し、必ず電源を切って鞄(かばん)に入れることを義務づけています。携帯電話が見えるところにあった場合は答案を没収して即時退場、携帯を手にしたものはその場で不正行為として取り扱うという徹底ぶりです。多くの大学の入試でも同様の措置がとられています。
不正を企てるものがいるかぎり、どんなに規制を強めても、完全になくすことは困難です。しかし、少なくとも携帯電話を使用した不正が明らかな以上、それにふさわしい対策が不可欠です。
入試の根幹ゆるがす
今回の不正は、「入試制度の根幹をゆるがす重大事件」(京都大学)と指摘されています。
教育の目的は人格の完成です。試験は、それぞれの学習の習熟と到達度を確認し、さらなる向上を目指すためにあります。入試競争の過熱のなかで、その行き過ぎが不正を生んでいるとすれば、入試制度そのものの根本からの見直しも免れるべきではありません。
大学入試はいまが真っ盛りです。不正によって一部の不心得者が得をすることはもちろん許されません。同時に、軽はずみな不正行為で一生に悔いを残すようなことがないように、大学と関係者が心を尽くすことが求められます。
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