2011年3月2日(水)「しんぶん赤旗」

マスメディア時評

消費税増税

「翼賛」の誤り繰り返すのか


 菅直人・民主党政権が社会保障と税の「一体改革」のためとして設置した「社会保障改革集中検討会議」の3回目の会合が先週末開かれ、「読売」「朝日」「毎日」など全国紙5紙がそろって消費税増税の大合唱を繰り広げたことに、波紋が広がっています。

 報道機関である全国紙の代表が時の政権の政策決定の場に参加し加担すること自体「翼賛」の極みです。しかも驚くのは当の全国紙が、「『消費税上げ不可欠』 新聞4社、見解一致」(2月27日付「読売」)などと自賛し、何の反省も示していないことです。

「御用新聞」になる

 2月26日開かれた集中検討会議には、「読売」「毎日」「日経」「産経」の代表が参加しました。「朝日」は「新聞の中立性を守(る)」(同紙27日付)との理由で出席しませんでしたが、消費税増税を主張した社説を資料として提供する中途半端ぶりです。「読売」が「新聞4社、見解一致」と書いたのは参加しなかった「朝日」を除いてのことですが、「朝日」自身が提供し、会合に提出された各紙の提言を比較した資料(別項)を見ても、年金改革で全額税方式か社会保険方式か、税率はどれぐらいにするのかなどの違いはあるにせよ、全国紙5紙が消費税増税の主張で一致していたのは明らかです。

 社会保障と税の「一体改革」は、昨年の参院選で唐突に消費税増税を持ち出し、国民の厳しい批判を浴びた菅政権が、社会保障を絡めて消費税増税を推し進めるために、新たな装いでスタートさせたものです。削減された社会保障は元に戻さず消費税は増税する、まさに「一体改悪」の策動です。そのための検討会議で、そろって消費税増税を求めた全国紙の主張がどれほど菅政権を勇気づけたかは火を見るよりも明らかです。

 問題は政府の検討会議という公式の場でのこうした主張が、報道機関としてのあり方にふさわしいかです。この点で「朝日」が「新聞の中立性」を会合欠席の理由にあげ、「こうした会議に出席して論議に参加することは、政策立案に関与することになる」としているのは至極当然ですが、それならなぜ資料の提供には応じたのか。また、会合に出席した「朝日」以外の全国紙はこの指摘にどう答えるのか、ぜひ聞きたいものです。

 新聞が言論機関としてそれぞれの問題で自らの見解を明らかにするのは大切な役割ですが、そのことと政権の政策決定に関与することは全く違います。そうした加担は文字通り“政府御用達”の「御用新聞」としての道であり、ジャーナリズムの最も大切な使命である「権力の監視役」としての役割を投げ捨て、読者・国民を裏切るものというほかありません。

自作自演の旗振り役

 しかも見過ごせないのは、これらの全国紙の態度が政府に求められたからという受動的なものでは決してなく、自ら菅政権に消費税増税を督促し続け、会議への出席を絶好の機会として自らの持論を展開し、能動的に政府の決断を迫るものになっていることです。

 これらの全国紙は、今年年頭の一連の社説で、菅政権に環太平洋連携協定(TPP)への参加や米軍普天間基地「移設」の決断とともに、消費税増税への決断を迫りました。

 こうしたことに照らせば、これこそ「自作自演」の旗振り役そのものであり、消費税増税に加担する全国紙の役割は危険なものがあります。

 全国紙の代表が出席したこの集中検討会議の翌27日、NHKが放送した特集番組「日本人はなぜ戦争へと向かったか」は、アジア・太平洋戦争の開戦にあたり、新聞や放送などマスメディアの熱狂的な報道が戦争をあおり、戦争賛美の世論を作り出したことを浮き彫りにしました。単純にそれと比較するわけではありませんが、全国紙はまた、時の政権に「翼賛」し、国民を誤導した戦前と同じ誤りを繰り返さないといえるのか。消費税増税での「翼賛」を見る限り、全国紙に投げかけられている問題は決して軽いとはいえません。(宮坂一男)


各社の提言の比較(「集中検討会議」提出資料から)

 「朝日」 所得税や相続税を含めた一体的な税制の見直しをする中で、消費増税は中心になる

 「読売」 消費税を目的税化して「社会保障税」に改め、税率を10%とする

 「毎日」 2025年までの社会保障全体で必要になる財源を算出して消費税の増税を実施する

 「日経」 将来、10%台半ばまでの引き上げはやむをえまい

 「産経」 足りない分は、消費税増税などの新財源を充てる





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