2011年1月30日(日)「しんぶん赤旗」

主張

中小企業支援

「主役」に相応の抜本策を


 政府が昨年閣議決定した「中小企業憲章」は、中小企業を「経済を牽引(けんいん)する力であり、社会の主役である」と位置付けました。

 菅直人首相も「中小企業への対策は、政府として最も重要な柱の一つだ」とのべています。

 ところが、民主党政権の中小企業政策は憲章の立場も首相の言葉も裏切って、自民党政権と同様に中小企業に冷たいままです。

自民党と同じ冷たさ

 2011年度予算案の中小企業対策費は前年から微増の1969億円、一般歳出の0・36%の規模にとどまっています。当初予算としては自民党政権の末期よりも小さく、1980年度(0・79%)の半分以下にすぎません。

 この問題を追及した日本共産党の市田忠義書記局長に首相は、補正予算で資金繰り対策など6千億円以上を計上し「万全を期している」と答えました。当初予算を圧縮し、景気が悪化すると金融支援を中心に補正予算を積み上げるやり方も自民党政権と同じです。

 “景気が悪くなって被害が出たら補正を組んで資金繰りを手当てすればいい”―。新旧両政権のやり方は中小企業対策を不況の際の緊急避難策としかとらえず、中小企業を日本経済の根幹として守り育てていこうという姿勢がないことを示しています。

 民主党政権は、その緊急避難策でも、中小企業が継続を求めている「景気対応緊急保証制度」を3月で打ち切る方針です。打ち切りに伴う政府の対応策では多くの中小企業が対象からはずされます。中小企業の「命綱」を断ち切るべきではありません。

 民間企業の賃金は過去12年で年収にして61万円も減りました。この「賃下げ」に日本経済低迷の原因があると指摘する経済専門家が増えています。雇用の7割を支える中小企業への支援を抜本拡充することは、「賃下げ」から脱却して内需主導の経済成長を実現するためにもきわめて重要です。

 アメリカは07年に最低賃金の大幅引き上げを決めると同時に中小企業向けに5年間で8800億円の減税措置を取りました。フランスは03年に最賃引き上げにとりくみ、中小企業を中心に3年間で2兆2800億円の社会保険料の企業負担減免に踏み切りました。これに対して菅内閣の「最低賃金引き上げに向けた中小企業への支援事業」はわずか50億円です。

 アメリカもフランスも、貧困対策としてだけでなく、内需拡大の景気対策にもなると位置付けて、これだけの規模の対策を実施しました。こうした例に学んで、思い切った措置を講じるべきです。

本格的な支援策に転換

 一般の報道や政権の姿勢を見ていると大企業が日本経済の「主役」であるかのように映ります。しかし、中小企業は企業数の99%を占め、先にのべたように雇用の7割を支えています。ものづくりの基盤技術を担っているのも中小企業であり、その技術は「他国の事業者が容易に模倣できない高度なレベルを達成」しています(中小企業政策審議会報告書)。

 大企業の下請け単価買いたたきを是正するとともに中小企業予算を大幅に増やし、融資偏重から経営基盤を直接支える内容に変える必要があります。中小企業を「社会の主役」として本格的に支援する政策への転換が求められます。





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