2011年1月29日(土)「しんぶん赤旗」
教職員に「日の丸」「君が代」強制
都通達 一転「合憲」
東京高裁 思想の自由へ不当判決
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学校の入学式や卒業式で、「日の丸」を向き、立って「君が代」を歌うよう教職員に強制する東京都教育委員会の通達や校長の命令は違憲違法だとして、都立高校などの教員ら約400人が都教委などを相手に、従う義務はないことの確認などを求めた訴訟の控訴審判決が28日、東京高裁でありました。
都築弘裁判長(三輪和雄裁判長が代読)は、義務がないと認めた一審東京地裁判決を取り消し、通達は「憲法に違反するとはいえない」として教員らの請求を退けました。
原告と弁護団は思想、良心、教育の自由についての理解に欠ける「不当判決」だとして上告する声明を発表しました。
判決は、国歌斉唱義務のないことの確認、不起立等を理由とする処分の差し止めについては、いずれも「通達の取り消し訴訟や無効確認訴訟の方が適切」だとして、訴えそのものを却下しました。
また、入学式や卒業式での「君が代」斉唱は、国旗国歌法と学習指導要領の趣旨にかない、全国的にも広く実施されているとして、「思想・良心の自由の侵害を認めることはできない」と判断。損害賠償も認めませんでした。
原告の都立高校教員の川村佐和さんは「一審判決を支えに働いてきた。学校で自由にものをいえない重苦しい雰囲気が強まる判決だ。訴えが認められるまで最高裁を相手にたたかっていきたい」と語りました。
加藤文也弁護士は「事前に処分を防止するという訴えは、最高裁判決でも既に認めていたもの。国民の権利救済を広く認めるという改正行政事件訴訟法の趣旨に反した許しがたい判断だ」とのべました。
「現場の苦しみ無視」
「国歌の起立斉唱の義務はない」とした一審判決を覆した28日の東京高裁判決に、予防訴訟の原告、弁護団、支援者らからは「最悪の判決」「行政のすることは間違いないということが前提になっている」など怒りの声が相次ぎました。
判決が言い渡されると法廷内に「ひどい」の声が広がりました。記者会見した弁護団は「極めて不当な判決。教職員が現場で苦しんでいることをまったく無視している」と厳しく批判しました。
2003年10月に東京都教育委員会が「日の丸・君が代」を一方的に強制する通達を出して以来、みんなで話し合って納得しあって教育実践をすすめてきた学校現場が「すべて最後は校長が一方的に決める。何を言っても無駄」という状態になってしまったと現職教師らは語ります。
原告の一人、片山むぎほさん(61)は「『日の丸・君が代』について自由に話し合うこともできない雰囲気になった。生徒に『日の丸・君が代』について話しただけでも校長に注意される」と語りました。
元都立高校教師の星野直之さんは「ひどいというより情けない判決。しかし、子どもたちの未来のためにもあきらめるわけにはいかない。勇気をもって最高裁に向け、私たちのたたかいを広げていきたい」と語りました。