2011年1月29日(土)「しんぶん赤旗」
薬害イレッサ訴訟
国が和解拒否
2・3月判決へ
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肺がん治療の抗がん剤イレッサをめぐり、患者と遺族が国と輸入販売元のアストラゼネカ(大阪市)に損害賠償を求めた訴訟で、政府は28日、東京、大阪両地裁の和解勧告に応じないことを決め、判決を求める意向を表明しました。同社も勧告受け入れを拒否しており、大阪地裁で2月25日に、東京地裁で3月23日に、それぞれ判決が言い渡されることになりました。
両地裁は勧告で、重い副作用の間質性肺炎に関する注意喚起が不十分だったなどと指摘し、国と同社の責任を認定。勧告に応じるか28日までの回答を求めていました。
関係省庁が協議した結果、「国の安全対策に違法性はなく、和解を受け入れれば新薬の承認審査を萎縮させる」などとし、勧告を拒否しました。
無念 娘が死んだ日を思い出す
原告ら憤り
「娘にごめんねとしか言えない」―。イレッサ訴訟で厚生労働省が和解勧告の拒否を表明した28日、同省内で記者会見した原告・弁護団は無念の思いと憤りをあらわにしました。
当時30歳の娘を亡くした原告の近澤昭雄さん(67)は「なぜこんな被害が起きたのかと、親の思いで闘ってきたが無念。ごめんねとしか言いようがない。何も頭に入らない。娘が死んだ日を思い出す」と言葉を絞り出すように話しました。
弁護団副団長の水口真寿美弁護士は「和解勧告を拒否することは、がん患者の権利と医薬品の安全確保の重要性を否定することに等しい」との声明を読み上げ、「国は裁判所の所見の内容を理解していない」と批判。永井弘二弁護士は「和解勧告は非常にシンプルで、安全な薬との情報が出回っている中で注意喚起が不十分だったと言ってるだけ。裁判所が6年かけた結実として出した所見を軽んじるものだ」と憤りました。
819人の犠牲… 謝罪の心持て
国会前で訴え
和解勧告にたいする回答期限を迎えた28日、原告・弁護団、支援者らは国会前で宣伝行動をおこない、国に対して和解のテーブルに着くよう口々に訴えました。道行く人々から、「がんばって」と激励の声が寄せられました。
原告団代表の近澤昭雄さん(67)、薬害肝炎訴訟全国原告団代表の山口美智子さん、薬害ヤコブ訴訟の原告や、公害被害者総行動実行委員会、全国公害弁護団連絡会議の代表、泉南アスベスト国賠訴訟の原告などが次々とマイクを持ち、「夢の新薬といって拙速な手続きで世界に先駆けて承認し、819人もの犠牲を出したことに、国は謝罪の気持ちで対すべきだ」と訴えました。
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