2011年1月7日(金)「しんぶん赤旗」
主張
北沢防衛相訪韓
日米韓軍事一体化の道進むな
北沢俊美防衛相が来週韓国を訪問し、自衛隊と韓国軍が軍事物資や役務を融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)と、提供し合った秘密軍事情報を保護する協定(GSOMIA)の締結について金寛鎮(キムグァンジン)国防相と協議します。
日韓の軍事協力関係の構築は、日本の植民地支配に対する韓国の国民感情のため実現してこなかったものです。にもかかわらず菅直人政権が二つの軍事協定を締結し、日韓軍事協力を強める構えをうちだしたのは、普天間基地問題でぎくしゃくしている日米軍事同盟を修復し、アメリカ政府の歓心を買うためです。
アメリカの危険な路線
日韓で結ぼうとしているACSAは、すでに日本がアメリカやオーストラリアと結んだものです。日韓の協定は日米協定と違い、有事には適用せず、日韓の共同訓練や国連平和維持活動(PKO)などで、自衛隊と韓国軍が一緒に活動するときに、燃料などの軍事物資や輸送作業などの役務を相互に提供し合うためのものです。一方、GSOMIAは、北朝鮮の核やミサイル、演習などの軍事情報を包括的に保全するというもので、両国の国民の「知る権利」を大きく制限するとりきめです。両協定とも日韓双方の戦争能力を強めるのがねらいです。
そもそも自衛隊の海外作戦を強めるとともに、韓国軍の作戦能力を高めるために軍事協定を結ぶこと自体、許されることではありません。とりわけ、戦争を放棄し、海外派兵を禁止した日本の憲法9条と平和原則に照らしてあってはならないものです。こうした軍事協定の締結の提起は、民主党政権が自民党とかわらない危険な政権であることを示すものです。
韓国との間には植民地支配時代に旧日本軍が韓国の国民を苦しめたという歴史的経緯があり、軍事面での協力は進んできませんでした。菅首相は昨年12月、「朝鮮有事」のさい邦人救出のために自衛隊を派遣すると言及して韓国側の批判を浴びたこともあります。韓国の国民が自衛隊を旧日本軍と重ね合わせ、拒否したのは明白です。
軍事力を背景に韓国に押し付けた「韓国併合条約」をいまだに「不法」と認めることもせず、旧日本軍「慰安婦」問題では謝罪も補償も拒み続ける一方で、日韓軍事協力関係に道を開こうとするなら、韓国国民のより大きな反発を招くのは避けられません。
マレン米統合参謀本部議長は北東アジアの事態には「日米韓で対応することが重要」と北沢防衛相にのべました(昨年12月)。日韓軍事協定が日米韓軍事一体化を加速するのは明白です。政府は日本をいっそう危険な道に引き込む企てをやめるべきです。
平和的解決に徹して
政府は昨年12月に決定した「防衛計画の大綱」で、北朝鮮や中国の「脅威」を口実に軍事力には軍事力でという「軍事対応主義」を前面に押し出しました。日韓軍事協定の締結はその一環です。しかし「軍事対応主義」では軍事的な緊張を強めるだけであり、北東アジアの平和には役立ちません。
日本は、軍事力に対して軍事力強化や軍事同盟強化で対応するだけといった「軍事対応主義」をやめ、憲法9条を生かした外交の力で平和を切り開く道をこそ強めるべきです。