2010年11月29日(月)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 映画「ふたたび」が各地で上映されています。“ふたたび”どころか、三度、四度と泣けてくる映画です▼神戸のあるジャズトランペット奏者と、彼の家族、音楽仲間が織りなす物語です。出だしの場面も忘れられません。黄金色にそまる夕日の海。島のがけっぷちから聴こえてくる物悲しいトランペットの音。毎日、夕暮れどきに決まった曲を吹く男がいる…▼財津一郎さん演じる主人公が、息子の説得で島から出る時がきます。彼は50年前、大事な演奏会の直前に島のハンセン病療養所に入れられました。死んだと聞いていた祖父に、孫は戸惑います。家族や周りの偏見も根強い▼が、主人公は老体にむちうち、50年前に果たせなかった夢の実現へつき進みます。彼の子を宿しながら引き裂かれた、最愛の恋人の面影を胸に。監督の塩屋俊さんがいいます。「筆舌につくしがたい苦しみを味わった患者さんたちに捧(ささ)げる意味で、虐げられたアメリカ黒人が生み出したジャズを軸にした」と▼主人公がいた療養所は、瀬戸内海の大島青松園です。香川本土と2隻の船で結ばれています。82トンの「せいしょう」と45トンの「まつかぜ」。公務員の船員が大島に毎晩泊まり、急病患者が出ても緊急に運びます▼政府は、うち1隻の運航を民間に任せようとして反対にあい、計画を断念しました。「いったい国は、私たちを島に隔離して人生を奪った責任を自覚しているのか」と問う元患者たち。映画「ふたたび」の涙の味を、大臣や厚労省の官僚もどうぞ。





■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp