2010年11月22日(月)「しんぶん赤旗」

主張

介護保険見直し

政府の役割が見えてこない


 2012年度からの介護保険制度の改定に向けて作業を進めている厚生労働省の「見直し」案が明らかになりました。焦点となっていた公費負担の引き上げについてはまったく認めず、保険料の引き上げを抑えるには利用者の負担増か給付削減しかないと、お役所発想そのもので国民にまったく冷たいものとなっています。

 これでは“負担あって介護なし”といわれる、介護保険の実態をいっそう深刻にします。保険料の引き上げを抑え、利用者の要望にこたえて安心できる制度にするため、公費負担の大幅な引き上げに踏み切るべきです。

“負担あって介護なし”

 2000年に創設されていらい10年を迎えた介護保険制度は、「介護の社会化」をうたい文句に公的な介護体制を確立し、その財源は、公費と国民が負担する保険料・利用料でまかなうとしてきました。

 高齢化が急速にすすむだけでなく、1人暮らしや高齢者だけの世帯も増えており、公的な介護体制の整備は急務です。にもかかわらず自公政府のもとでは社会保障費抑制のため公的な介護の整備は遅れ、国民には給付の抑制と負担強化が押し付けられてきました。

 介護保険の施行から10年にあたって日本共産党国会議員団が6月に発表したアンケート調査でも、負担が重くサービス利用を抑制している人が7割を超す、訪問介護事業者の7割が人材不足、特別養護老人ホームに入れない待機者が多いなど深刻な状態がうきぼりになっています。「介護の社会化」とは真っ向から反する事態です。

 問題の根本には、介護を必要とする高齢者が増え、費用は増えざるをえないのに、それを支える責任を果たそうとしない政府の姿勢があります。今回の介護保険の見直しでも、国の負担引き上げが切実に求められたのに、厚労省は「安定財源が確保できない」などの理由で引き上げを見送っています。公的負担を増やさなければ、保険料負担の増大と介護サービス後退の悪循環を繰り返すだけです。

 厚生労働省の「見直し」案が示している、65歳以上の保険料が5200円程度にまでアップするのがいやなら、利用者の自己負担額の2割(現行1割)への引き上げや「軽度」の利用者への給付縮小などが必要になるという試算は、高齢者への脅し以外の、なにものでもありません。

 1カ月5000円を超す保険料が、少額の年金に頼る高齢者の負担の限度を超していることは明らかです。「軽度」といわれる高齢者でも、必要な介護を取り上げられれば症状が悪化したり、在宅生活が困難になる懸念があります。負担増かサービスの後退かと二者択一を迫るのではなく、必要な介護の保障こそ政府の責任です。

介護の公的役割拡大を

 高齢者は長年にわたって社会に貢献してきた、文字通り「国民の宝」です。そうした高齢者が安心して老後を送れるよう、介護や医療、年金などの体制を整えることは文字通り国と社会の責任です。

 介護保険への公的負担を大幅に増やし、安心できる公的な介護制度を実現するなど、老後のための対策充実が求められています。高齢者から介護を取り上げ、「姥(うば)捨て山」といわれる差別医療も続けるのでは、民主党政権がその役割を果たしていないのは明らかです。





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