2010年11月19日(金)「しんぶん赤旗」

介護保険 弱者ほど冷遇

制度実施10年、民医連が調査

負担重く利用日数減らす 保険料滞納で利用料3倍


 全日本民主医療機関連合会(全日本民医連、藤末衛会長)は18日、東京都内で記者会見し、「『介護保険10年』検証事例調査報告」と題する介護保険利用者・家族についての大規模な全国実態調査の結果を発表しました。貧困化の広がりの中で、低所得者ほど重い費用負担に苦しみ、必要な介護サービスを受けられない実態が明らかになりました。


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(写真)介護保険の実態調査の結果を発表する全日本民医連代表ら=18日、東京都文京区

 この調査は、2000年4月に導入された介護保険制度の実態を検証するために実施。今年5月〜9月末までの調査期間に29都道府県420の事例を集めています。

 それによると、「経済的困難でショートステイ(短期入所介護)の利用日数を5分の1に制限している。利用料の未払い額も約30万円になった」(84歳の女性)など介護サービスを利用すればするほど利用料が重くなる仕組みのため、必要な介護サービスの利用を抑制している事例が目立ちました。

 「保険料滞納による制裁措置でサービス利用負担が3割になり、その支払いのために家族は働き詰めになっている」(78歳の男性)など、保険料を2年以上滞納した場合、利用負担が1割から3割になるといった制裁措置の問題も明らかになりました。

 「限度額を超えるため月によってデイケア(通所介護)を減らしている。家族は認知症のため介護できない」(83歳の男性)など、支給限度額制度(最重度の要介護5で支給限度額が月約36万円まで)のため、十分なサービスを利用できない実態も浮き彫りになりました。

 記者会見で全日本民医連の林泰則事務局次長は、12年度の制度改定に向けた政府内の見直し作業について「給付(サービス)抑制・負担増『先にありき』という見直しを、利用者・家族は求めていない」と強調。この10年来の給付抑制方針を転換して、「給付は必要に応じて」(必要充足原則)と「負担は支払い能力に応じて」(応能負担原則)を貫いた同制度の再設計が「何より必要だ」と訴えました。

 同調査報告の全文は19日から全日本民医連のホームページで公開予定です。


 介護保険制度の改定作業 2012年度に介護保険制度を改定する計画が社会保障審議会介護保険部会で議論されています。厚生労働省は▽高齢者・軽度者の利用料引き上げ▽軽度者への生活援助サービスの縮小▽40歳未満からの保険料徴収(現行は40歳以上)―など負担増と給付減のメニューを列挙しています。





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