2010年10月26日(火)「しんぶん赤旗」
医療「新制度」
全世代で保険料増加
厚労省試算 25年度 軒並み3万円超
厚生労働省は25日、2013年度から70〜74歳の患者の窓口負担を、新たに70歳になった人から順次1割から2割に倍増する方針を正式に表明しました。また、高齢者と現役世代の両方に急激な保険料アップとなる財政試算を示しました。後期高齢者医療制度に代わる「新制度」を議論している高齢者医療制度改革会議に示したものです。
「新制度」の試算によれば、10年度と比べて25年度の1人当たり年間保険料は、国民健康保険(国保)に移行する75歳以上の高齢者の場合、3万2千円増加します。現役世代も、大企業の社員が入る健康保険組合では9万4千円(労使合計)、中小企業の社員が入る協会けんぽでは7万2千円(労使合計)、国民健康保険加入者は3万9千円増えます。
現在、75歳以上の高齢者の医療給付費(患者負担を除いた医療費)の約4割を現役世代の保険料でまかなっていますが、厚労省はこの支援金の計算方法を変更する方針も示しました。現行の加入者数に応じた支援額を、年収に応じた支援額に変え、年収の高い健保組合と共済組合(公務員)の負担を増やします。
70〜74歳の患者負担を1割に据え置くために現在は約2000億円の国費が投入されています。この患者負担を順次2割に引き上げることで、20年度には2900億円の国費削減になります。
厚労省は、将来的に保険料を抑えるためには公費の投入を増やすことが必要ではないかとしつつ、歳出増の施策を行う際は恒久的な財源を確保することが現政権の方針だと説明。13年度にはむしろ国費を減らす方針を表明しました。
解説
70〜74歳の医療費患者負担倍増
老後の不安 大幅に拡大
25日の高齢者医療制度改革会議に厚労省が示した、70〜74歳の患者負担の倍増(1割から2割へ)案は自公政権ですら実行できなかった暴挙です。
かつては70歳以上の患者の窓口負担は無料でした。1983年から有料化されましたが、当初は月400円(外来)の定額制でした。2000年の法改悪で定率負担が導入され、「いくらかかるか分からない」不安が広がりました。今回の改悪で窓口負担を倍増すれば、医者にかかれない高齢者が増え、病気になりがちな老後の不安が大幅に拡大します。
さらに、厚労省が示した財政試算は、すべての世代に大幅な負担増を押し付けます。現行の後期高齢者医療制度は75歳以上の高齢者と現役世代を別勘定にした上で、高齢者の医療費の一定割合を高齢者の保険料でまかなう仕組みです。高齢化に伴って保険料が急激に上がっていきます。
「新制度」では高齢者の保険料の上昇率を若干緩やかにする方向が検討されていますが、高齢者の負担上昇を多少抑えた分は現役世代の健保組合と共済組合に負担を押し付けます。現役世代と、高齢者を対立させ、高齢者に肩身の狭い思いをさせて医療費削減を迫る、自公政権と同じ手法です。(杉本恒如)
後期高齢者医療制度の「新制度」 75歳以上で、サラリーマンとして働き続けている人やサラリーマンの家族に扶養されている210万人は、健保組合や協会けんぽに加入。それ以外の1200万人(75歳以上)は国保に加入します。国保は75歳で区切って財政を別勘定とし、75歳以上は都道府県単位で運営します。
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