2010年10月1日(金)「しんぶん赤旗」
主張
武富士更生法申請
過払い利息返還から逃げるな
サラ金大手・武富士が経営破たんし、会社更生法の適用を申請しました。「サラ金3悪」といわれる高金利、過剰貸付、違法な取り立てで無数の不幸と悲劇を社会にまき散らしてきた異常な企業が、社会的批判と規制強化によって、経営に影響を受けるのは当然です。
問題なのは、これに伴い、法的に払う必要のない高利をとられ、返還を求める人たちに被害が及びかねないことです。多重債務に陥った人たちの生活再建の貴重な原資ともなっている「過払い利息」の返還を、武富士が免れるようなことがあってはなりません。
「計画的」に「利用」
武富士の発表によると、同社の負債は4336億円。これにはすでに確定した過払い利息返還分の1713億円も含まれます。会社更生法の手続きに入れば、同社の資産の状況に応じて、債権者に債務の放棄や圧縮を求め、身軽になったうえで会社再建を目指すことになります。
同社の経営状況を知った上で、資金を融資した大銀行、社債を買った投資家らが、その責任に応じて債権の圧縮に応じることはやむを得ないでしょう。しかし、生活のためにやむにやまれず借金をし、それに違法な高利がついていたことがわかって、過払い利息の返還を求めている人たちの債権まで、これと同列に置いてカットするなどというやり方には道理のかけらもありません。
サラ金各社は、利息制限法の上限金利(年15〜20%)を超える出資法の上限金利を使って、年30%近い高利貸し経営を長く続けてきました。「グレーゾーン」と呼ばれたこの高利は、2006年1月の最高裁判決で「無効」とされました。長年、苦労に苦労を重ねて返済を続けてきた人が、正規の金利に引きなおしてみたら、返済がとっくに終わっていたばかりか払いすぎた金利が多額になり、その返還をサラ金に求めることができるという道が開けたのです。
サラ金業界全体では、過払い利息返還が年間1兆円を超え、各社の経営を追いつめています。返還請求は過去10年間さかのぼることができるので、武富士の返還額はさらに膨らむ可能性があります。同社では、少なくとも「100万人超、1兆円超」になることを想定しています。
武富士の社長は記者会見で、更生法申請の理由を、「最高裁判決以降、過払い金請求が急増し、収入が大幅に減少した」とのべました。過払い利息返還を逃れたいというねらいはあけすけです。
「ご利用は計画的に」。サラ金各社が盛んに流しているおためごかしの宣伝文句が頭をよぎります。武富士が、何をおいても利用者に返還しなければならない過払い利息を足切りするために、「計画的に」会社更生法を「利用」するなど許されることではありません。
被害者救済を最優先で
今年6月に完全施行された改正貸金業法は、金利規制の強化や年収の3分の1を超える貸し付けを禁止する総量規制の導入など、多くのサラ金業者に市場からの退去を求めるものとなりました。その処理の過程で新たな被害者を生むことがあってはなりません。
武富士の整理では、被害者の救済を最優先にしなければなりません。金融庁、管財人はその立場で、厳しく対応すべきです。
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