2010年9月6日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
バス通学 支援助かる
子どもの教育費がかさむ今日、バス通学による費用負担の軽減は親たちや関係者の切実な要求です。この声に自治体がこたえている新潟県上越市と埼玉県飯能市の例を紹介します。
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山間地域 念願の補助
埼玉・飯能
埼玉県飯能市は4月から通学バス代が高額になる高校生などに料金の一部を補助する制度を始めました。日本共産党市議団や党支部が繰り返し要求してきたものです。
飯能市は面積約200平方キロメートルと広大で、秩父へと続く西部地域は山間地が広がっています。西部地域の名栗や原市場地区から市街地へ行くには車のほかはバスが頼りです。
■定期代20万円
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西武線飯能駅までバスで行く場合、最も遠い上名栗地区のバス停(距離約27キロ)からは通学定期券で年間20万円を超える料金になります。節約のために自転車通学する生徒もいますが、歩道未整備の区間があったり、道が狭く夜は暗かったりと交通事故に遭う心配があり、バス代の補助は子育て家庭の切実な要求でした。
日本共産党原市場支部と名栗支部は昨年10月、支持者、民主団体の協力も得て、両地域の約3800世帯を中心に1500人を超える署名を集めました。同年12月市議会で新井巧党市議が改めて補助実現を要求し、市から制度を創設する意向の答弁を引き出しました。
実現したバス通学費補助制度は、市内在住の高校生、私立中学生などが対象で、市内通過分のバス定期代が年間10万円を超える場合に額に応じて1400円から最大5万5400円を軽減。飯能駅からみると西に約9キロ以上離れたバス停から乗る人が該当します。制度は山間地域の人口やバス路線維持の意味あいも持たせています。
■次は制度改善
8月末までの申請状況は109件で、市街地から遠い名栗地区が43件と多くなっています。市は引き続き制度の利用を呼びかけています。
補助を受けた高校生の母親は「額は多くありませんが補助は助かっています。一方で条件を満たさずに受けられない家庭は不公平感があると思う。バス代の負担が重い家庭が補助を受けられるよう見直していってほしい」と話します。
新井市議は「決して十分とはいえないものの住民要求を受けて一歩を踏み出した意義は大きい。今後は制度の改善を求めていきたい」と話しています。(埼玉県・川嶋猛)
無料化継続 新路線も
新潟・上越
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新潟県上越市は、2005年1月に旧上越市と周辺13町村が合併し、合併協議で10年度から統一新基準で、通学援助費を見直すことになっていました。13区(旧町村)でほとんど無料だった遠距離通学の児童・生徒のためのスクールバス利用料が有料になろうとしていましたが、住民や日本共産党の取り組みで無料になり、新たにバスが運行されるところもできました。
■冬期はふぶき
4月からスクールバスが運行された三和区の母親(40)は「子どもは今まで徒歩通学でした。4年と2年の女の子なので、冬期は雪やふぶくときが心配でした。下校が遅くなっても、スクールバスが家の近くで止まるので安心です。負担もなくなり、助かっています」と語ります。
13区の多くから、経済的負担の増大などで有料化に反対する声が上がりました。大潟、吉川、頸城(くびき)、柿崎、中郷各区の地域協議会(市長の諮問機関で住民の意見・要望を具申することもできる)が負担増を見直し、旧町村で行ってきた通学での施策を尊重するよう意見書を上げました。
日本共産党は、頸城区や吉川区などで開いた住民懇談会で意見を集約するとともに、スクールバス問題だけでの住民意見交換会も開き、議論をよびかけました。
議会でも、橋爪法一、上野公悦両市議が繰り返し質問。教育を受ける権利の保障と平等、負担軽減を求めました。地域協議会委員を務めている日本共産党の元議員や支部長なども積極的に活動しました。
こうした動きのなかで、村山秀幸市長がスクールバスの無料化を決断しました。
大潟区地域協議会委員の後藤紀一さん(元大潟町議)は「スクールバス問題で市長から諮問が出るのではないかと予想していたが、諮問が出てからでは論議する時間が足りなくなると思って、積極的に議論するよう提案した」と語ります。
■合併前を維持
4月までは通学援助費が旧町村で、補助の有無、金額などバラバラでしたが、新基準では、旧町村の施策がほとんど維持され、原則として小学校3キロ以上、中学校5キロ以上の通学範囲で無料スクールバスを運行するか、通学援助費を拡充することになりました。
頸城区の中学生の父親(48)は「4月から有料化されると思ったが、無料になり本当によかった。教育を受ける権利は平等なのに、学校から遠い子どもと近い子どもの負担が違うのは不平等。共産党議員が頑張らなかったら無料にならなかったかもしれない」と語ります。
党市議団(4人)の橋爪団長は「スクールバス問題を契機として、合併前の施策を後退させず、拡充できるよう今後も取り組んでいきたい」と語っています。(新潟県・村上雲雄)