2010年8月4日(水)「しんぶん赤旗」

非正規増え格差拡大

人件費抑制 規制緩和が後押し

労働経済白書


 厚生労働省は3日、2010年版「労働経済の分析」(労働経済白書)を公表しました。非正規雇用者の増加によって雇用者間の格差が拡大したと強調しました。その背景には大企業の人件費抑制戦略があると指摘しました。さらに、労働者派遣事業の規制緩和が、人件費抑制戦略を後押しした、としました。

 非正規雇用比率が増加した原因として白書は「大企業による非正規雇用の増加が主要因」とした上で、その背景に「相対的に賃金の低い者を活用しようとする人件費コストの抑制志向が強かった」と指摘しました。

 さらに白書は、「労働者派遣事業の規制緩和が、こうした傾向を後押しした面があったものと考えられる」としました。

 非正規雇用の増加は平均賃金の低下をもたらし、年収の低い層の増加が雇用者の賃金格差拡大の原因となりました。

 白書は、「平均賃金の低下や格差の拡大により、所得、消費の成長力が損なわれ、内需停滞の一因になったものと考えられる」と分析。また、「大企業中心に取り組まれた賃金・処遇制度の改革も、賃金格差を拡大させ、人々の生きがい、働きがいを損なった面もある」としています。

 この白書の分析は、大企業による身勝手な賃金抑制戦略と、それを後押しした政府の規制緩和が日本経済を大きくゆがめたことを示しています。

正社員以外の賃金

年重ねても上昇せず

 正社員は年齢を重ねることに伴い賃金は上昇します。しかし、パートや派遣など正社員以外の働き方をしている場合、年齢が上昇しても、ほとんど賃金は上昇しません。年齢が低い段階では、正社員と正社員以外の賃金格差は大きくないものの、45〜49歳、50〜54歳の年齢段階では、ほぼ2倍の格差が開きます。

 白書によると、正社員は年齢の上昇に伴い勤続年数も上昇します。一方、正社員以外では、勤続年数がほとんど上昇しません。「長期勤続を通じた職務経験の蓄積や職業能力形成が困難となっている」と白書は指摘しています。

表

現金給与総額

3.8%減 落ち込み最大

 現金給与総額の動きを見ると、2002年の景気の「回復」のもとで05年にようやく上昇に転じました。しかし、07年には再び低下。09年まで3年連続で減少しています。

 09年の現金給与総額は前年比3・8%減となり、減少率の大きさは統計調査開始以来最大のものでした。

 事業所規模で見ると大手企業において減少幅が大きくなっています。500人以上の規模では同7・5%減、100〜499人規模で同3・1%減、30〜99人規模で同5・4%、5〜29人規模で同2・6%減でした。

 白書は「所定外給与や特別給与の削減の影響がみられる」と指摘しています。

グラフ




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