2010年6月22日(火)「しんぶん赤旗」

規制緩和で保育環境悪化のなか

増える園での死亡事故

1部屋にゼロ歳児25人の園も

詰め込み、保育士不足…


第40回無認可保育所全国集会の分科会から

 保育所に入れない待機児童は約4万人にのぼるなか、待機児童の受け皿としての役割がますます強まっているのが認可外(無認可)保育所です。このほど静岡県伊東市で開かれた第40回無認可保育所全国集会では、「園での事故を考える」の分科会が初めて設けられました。


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(写真)200人をこえる人が参加した全国集会=静岡県伊東市

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(写真)自分たちの園でのとりくみや質問などを全員が出し合い、交流した分科会

 同分科会では、保育施設などで子どもを亡くした親たちでつくる「赤ちゃんの急死を考える会」副会長の小山義夫さんが死亡事故を報告し、20人ほどの保育士が討論・交流しました。

うつぶせ寝の窒息状態で

 今年1月、福島県郡山市で、認可外の保育所に預けて3日めの1歳の女の子が、泣きやまないからとうつぶせ寝にされ、その上から四つ折りにしたおとな用の毛布をかぶせ、枕2個を重石(おもし)としてのせられ、数十分後に死体で発見されました。

 沖縄の認可外では、2007年、預けて数日の男の子(7カ月)が、うつぶせ寝の窒息状態で発見され、搬送先の病院で死亡しました。その園は定員400人の大規模園で、ゼロ歳児25人がワンフロアに。保育士の数が大幅に不足していたなかで事故が起きました。

 「考える会」の把握している死亡事故は1961年度から2008年度までで240件。多くは認可外施設での事故ですが、小山さんは「01年以降、認可保育所での死亡事故が急増している」と報告。ちょうど小泉内閣が「待機児ゼロ作戦」を実施し、定員以上を入所させる詰め込みが進み、保育士も常勤から非常勤にと、規制緩和がすすめられた時期と重なるといいます。

よりよい保育保障こそ

 埼玉県上尾市の公立保育所では、05年、4歳児が狭い本棚の中で死体で発見されました。昼食準備で食器が1人分余ったことで初めていなくなったことに気付いたといいます。

職員みんなでよく話し合って

 「現場で『危ない』と感じたことを職員同士で話し合ったり、園全体に周知できる職場環境になっていれば、多くの事故は未然に防げると思う」と小山さん。上尾市では職員会議は月1回、しかも非常勤やパート職員は参加しません。埼玉県滑川町の園長は「うちでは毎日のように会議をやっているし、職員みんなで何でも話し合っている。月1回は少ないのでは」といいます。

 東京の31歳の保育士は、資格をとる前にアルバイトで勤めていた駅前保育所での経験を報告しました。「資格をとったばかりの保育士含め3人で30人ほどの園児を連れて公園に散歩にいったときに、体験入園初日の男の子が公園からいなくなった事件がありました。近くの交番で保護されたんですが、今でも忘れられない」と語りました。

企業参入で安上がりな保育に

 千葉県船橋市の共同保育所の園長は、「死亡事故の遺族の方には、命を守ってあげられなくてごめんね、とまずいいたい」とのべたうえで、「私たちは保護者に、どういう保育をしているか、きちんと説明できなければならない」と保育の専門性について指摘しました。

 「無認可保育所は、産休明け保育を公立に先駆けてやってきた。国や自治体の補助金もほとんどないなかで、ゼロ歳児が集団保育のなかでどう成長していくのか実践してきた。いま、保育に企業が参入し、安上がりな保育のなかで、保育士も子どもも劣悪な保育環境の中にいます。どの子にもよりよい保育を保障していくために、私たちの役割は大きい」と話しました。





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