2010年5月8日(土)「しんぶん赤旗」
ニューヨークでの活動について
志位委員長の記者会見
日本共産党の志位和夫委員長が5日、ニューヨーク市内でおこなった記者会見は次のとおりです。
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日本共産党の訪米団のニューヨークでの活動は、今日をもって終わり、ワシントンに移ります。
私たちの今回の訪米の最大の目的は、核不拡散条約(NPT)再検討会議に出席するとともに、その成功のために唯一の被爆国の政党として、可能な最大限の努力をはかることにありました。4月30日から5月5日までの6日間の活動で、この目的は基本的に果たすことができたと思います。
NPT再検討会議成功にむけ、前向きで建設的な意見交換
私たちは、NPT再検討会議への要請として、1枚の要請文を作成し、会議主催者、国連関係者、各国政府代表団に渡しながら、会談を重ねてきました。
要請の中身は、二つの点です。第一は、2000年のNPT再検討会議での核保有国による核兵器廃絶を達成する「明確な約束」を再確認することです。これは会議成功の土台となるものです。第二は、核兵器廃絶のための国際交渉を開始する合意をつくることです。これは「核兵器のない世界」にすすむうえで核心中の核心の問題です。
私たちが、この6日間で要請・会談をおこなったのは、つぎの方々です。
NPT再検討会議主催者側では、カバクチュランNPT再検討会議議長とシディヤウシクNPT再検討会議第1委員会(核軍縮)委員長。国連関係者では、ドゥアルテ国連上級代表(軍縮担当)とお会いしました。今回の再検討会議の運営の要となる方々とお会いし、要請をおこない、つっこんだ会談をすることができました。
NPT再検討会議参加国の政府代表団、国連代表部などとの会談では、核保有国ではイギリス。非同盟諸国では現議長国のエジプト、前議長国のキューバ、さらにベトナム。新アジェンダ連合ではスウェーデン、ブラジル。核兵器禁止条約を提唱しているコスタリカ。さらに北大西洋条約機構(NATO)加盟国のオランダ、ドイツの国会代表団との会合もおこないました。
すべての要請・会談が、たいへん前向きの建設的な内容となったと思います。
さらに、短い滞在期間ですから、直接に要請・会談ができた国はかぎられましたが、わが党の要請文は、要請・会談ができなかった国もふくめて、再検討会議に参加したすべての国々にお届けしました。
NGOとの交流と連帯、ニューヨークでのパレード
この会議に参加した国際非政府組織(NGO)、各国NGO、日本原水協のみなさんとも交流と連帯の活動、意見交換をおこないました。初めての訪米で、ニューヨークのマンハッタンを、NGOのみなさんとともにパレードすることができたのは、私たちにとって大きな感動でした。
このなかで、日本原水協が果たしている役割が国際的にもいよいよ大きなものとなり、信頼が高まっていることを強く実感したことも、たいへんうれしい思いです。
バーモント州での交流について
4日には、バーモント州議会を訪問しました。バーモント州では上下両院で、核兵器廃絶国際条約の交渉開始のための計画をNPT再検討会議に提出するようオバマ大統領に求める決議が採択されています。私たちは、そのニュースを日本で知り、これは核兵器廃絶交渉を開始しようという私たちの立場とまったく一致する方向だ、ぜひ訪問しようということで、現地にうかがいました。
私たちは、上下両院議長に温かい歓迎を受けました。また、議事堂のホールでは、決議の採択に尽力した議員のみなさんを中心に、約50人の議員が私たちを温かく迎えてくれ、私の短いスピーチに、大きな拍手で連帯の気持ちをあらわしてくれました。
驚いたのは、下院の本会議が開会中だったのですが、午後のセッションに参加してくれということになり、普段は上院との合同の会議がおこなわれるさいに上院議員が座る席に私たちが案内されて着席したことです。日本共産党の代表団だということが紹介されると、議員のみなさんが長いスタンディング・オベーション(総立ちでの拍手)をしてくれたのです。心のこもった、連帯の気持ちがとても強く伝わってくる拍手でした。外国の議会で、あのような歓迎を受けたのは、初めての経験でした。
米国でも、草の根の平和の運動とむすびついて、こうした動きが起こっていることは、たいへんうれしく感動的なことでした。
核廃絶交渉の開始を求める声は世界の大勢
会議主催者、国連関係者、参加国などへの要請と会談、そしてNPT再検討会議で始まった討論など、全体をつうじて、つぎの点を感じています。
第一に、全体として、「核兵器のない世界」を築くという意思、この歴史的チャンスを必ず生かしたいという思いは、文字通り国際社会の圧倒的多数の流れとなっていると思います。5年前の再検討会議と比べると、情勢の大きな前向きな発展があると思います。
第二に、核兵器廃絶のための国際交渉の開始という私たちが提起している点についても、世界の国々の大勢がその方向に向かっているということが、一連の要請・会談でも、討論を聞くなかでも、確認できました。
ですから、これは、核兵器保有国が決断すれば、すぐにでも始めることができるわけです。核保有国が核廃絶交渉の開始に合意して、交渉のテーブルにつくことが強く求められていると思います。
再検討会議のなかでは、個々には困難な問題、複雑な問題も起こっており、その成り行きを予断を持っていうわけにはいきません。しかし、ぜひ、各国政府が、「核兵器のない世界」をめざすという大局にたって、困難な問題、複雑な問題に適切に対処しながら、この歴史的な会議を成功させることを願ってやみません。
わが党としても、再検討会議の成功のために、可能な努力をひきつづきおこなっていきたいと思います。
米国の草の根の民主主義の伝統にふれた
最後に一言、私たちは、まだニューヨーク市内とバーモント州しか行っていないので、米国社会が全体としてどんな姿かということの体験は、ごくささやかな最初の段階にすぎません。
バーモント州での体験で強い印象を受けたことですが、米国は、草の根の民主主義の伝統が深い国だと感じました。バーモント州で起こっているようなことは、全米のあちこちであるのだろうと思います。
この国には、いろいろな多面的な側面があるでしょうから、まだその一端に触れただけですが、州議会でお会いした人々の姿は、本当に、だれかれも平等で親愛の情で接するのです。議場に座っていますと、衛視さんがやってきて、私たちと親しく会話が始まります。日本の国会では考えられないことです。私たちと一緒に記念撮影をしたガールスカウトのお嬢さんたちも自由に出入りして、討論しています。市民に自由に開かれている姿をみることができました。
この連帯性がどこからくるのですかと聞いてみましたら、植民地の最初の時代に、非常に生活が苦しく飢餓もひどかった、そのときに助け合って、共同して社会を支えていく精神がつくられ、いまにも生きているという話でした。
バーモント州は、奴隷解放戦争で人口比でもっとも多くの兵士を送り、北軍の先頭に立ってたたかったことを誇りにしているということですが、今度も核兵器廃絶交渉の開始を求める決議を全米で最初に採択したことを誇りにしていました。
米国社会には、独立革命、民主主義の偉大な伝統が、いまもさまざまな形で生きているということも感じているところです。
《一問一答》
米国社会が大きく変化しつつある
問い かつては共産党員の米国入国が制限されていた時期がありましたが、今回の訪米で共産党への偏見を感じましたか。
志位 そこは変わったと感じます。1980年代までは、コミュニストというだけで、入国が難しかった時期があったわけです。その後、だんだん変化が起こってきています。今回の訪米につながる最初のきっかけは、オバマ大統領の昨年4月のプラハの「核兵器のない世界」をめざすという演説にたいし、私が、これを「心から歓迎する」、同時に世界に宣言したことを実行してほしいと要請する書簡を大統領に送り、大統領側から返書が届いたということにありました。返書が届いたということについて、米国社会にずいぶん変化が起こっていると感じました。
東京の米国大使館とは、米国独立記念日のレセプションに参加するなど、さまざまな交流が始まりました。今回、訪米して、政府や議会の関係者ともお会いすることで、米国が大きく変化しているということを感じます。
「核兵器のない世界」――原点は言語に絶する被爆体験
問い 潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が広島訪問を発表しましたが、オバマ米大統領の広島・長崎訪問についてどう考えますか。
志位 国連事務総長の広島訪問は、たいへんすばらしいことです。潘基文さんの演説は、2000年のNPT再検討会議の合意を再確認しながら、それを拡張・発展させるという立場を明確に打ち出したもので、とても良いものでした。
NGOの国際会議でも潘基文さんの演説を聞きましたが、そこでは核兵器禁止条約の交渉という提案もされました。同氏の5項目の核軍縮計画の第1項目は、核軍縮・廃絶のための国際交渉です。私たちの主張と響きあう主張が、国連事務総長から聞けたということはうれしいことです。
被爆者の多くの方が、オバマ大統領の広島訪問を願っています。私は、「核兵器のない世界」をもとめる動きの原点は、言語に絶する被爆の体験だと思います。その原点を見据え、その悲惨さを胸に刻んで、すべてが始まっていくわけですから、オバマ大統領が、広島・長崎を適切な機会に訪問することを願っています。
キューバとの会談――「非同盟諸国に要請文を紹介したい」
問い キューバとの会談はいかがでしたか。
志位 キューバとの会談もとても良いものでした。私たちの要請文について、「全面的に賛成です。非同盟の国々に紹介して良いですか」と聞いてきたので、「願ってもないことです」と応じました。
後で話す機会がありましたが、キューバは、私たちの要請文を、非同盟の国々に紹介してくれたとのことでした。非同盟諸国首脳会議の前議長国の手で、私たちの要請文が非同盟の国々に伝わったことは、たいへんうれしいことです。
ミュージカルの発祥の地で
問い ブロードウェイの観光などには行きましたか。
志位 ブロードウェイでミュージカルを見ました。「マンマ・ミーア」という作品です。本場のミュージカルは、歌も踊りも本格的で素晴らしかった。
私は、「レ・ミゼラブル」「ベガーズ・オペラ」など、東京でもミュージカルはよく見ます。ミュージカルはもともと、米国が発祥の地です。ポップとかジャズとかクラシックとか、多様な音楽がベースとなり、そこに踊りが入っている。米国が生み出した文化ですから、ぜひ行ってみたいと思っていました。
5月2日の日曜日の夜の日程がたまたま空いたので、見ることができました。
普天間問題――首相の行動は地元の怒りの火に油をそそいだ
問い 鳩山由紀夫首相と徳之島の3町長との会談についてどう考えますか。
志位 徳之島では、島民の6割、1万5000人が参加する大集会が開かれ、米軍基地をもってくるのはまかりならないという絶対的な意志がはっきりしています。三つの自治体の責任者がそろって反対を表明しています。会う前から結果は明らかだと思いますが、公式にそれが明瞭(めいりょう)になると思います。
問い 会談の実現が問題の解決になりますか。
志位 なりえません。むしろ、いよいよ深刻なゆきづまりがはっきりしてくることになるでしょう。
鳩山首相が4日に沖縄を訪問して、一連の行動をおこなった。そのことが、沖縄県民の怒りの火に油を注ぐという結果をつくっています。沖縄では、4月25日に、9万人が参加する県民大会がおこなわれ、知事と県内41すべての自治体の首長(うち代理2人)が参加し、県内に基地をつくることはまかりならないということが、文字通り県民の総意となりました。
鳩山首相は、新たな基地を県内につくるという方針を持っていったわけですが、これはまさに県民の総意に逆らうものです。自らの公約に反するものをもっていった。そのことが、沖縄県民の怒りをいよいよ広げることになった。首相の行動は、県民大会で示された新基地建設を許さないという全県民的な団結を、さらに強める結果となったと思います。
もはや「県内移設」で住民合意を得るのは絶対に不可能です。徳之島への一部移転も理解を得るのは不可能です。普天間基地は、無条件の撤去を求めて、米側と交渉する。これが唯一の解決の道です。そのことがいよいよ明瞭となったと思います。
「党の公約ではない」――こんな無責任な言い逃れはない
問い 普天間問題での鳩山首相の政治責任についてどう考えますか。
志位 ともかく沖縄県内には新しい基地をつくることはしないというのが、民主党の総選挙での公約でした。この公約に、沖縄県民は期待したわけです。その公約を裏切ることをやろうということは、どんな言い訳をしても許されるものではない。その政治責任は重いといわなければなりません。
公約違反を記者に問われて、鳩山首相は、「民主党の代表としての公約であって、党の公約ではない」といったそうですが、こんな無責任な発言はありません。党首が自ら言ったことが、党の公約ではないということになったら、党首討論会などやる意味はないし、選挙での党首の発言の意味はなくなります。こういう無責任な言い逃れを現地でやったそうですが、これも現地での怒りを広げています。
公約にそむいていること、県民の総意にそむいていること、ここに一番大きな政治責任があります。