2010年3月31日(水)「しんぶん赤旗」
衆院議運理
与党 参院先議ごり押し
政府2法案 佐々木氏、撤回求める
衆院議院運営委員会は30日の理事会で、参議院から審議を始める(参院先議)として政府が29日に一方的に提出した労働者派遣法改定案と「地域主権」関連法案の扱いについて協議しました。野党は、「衆院の議運理事会で協議中であり、合意してもいないのに参院に突然提出するにはあまりに異例であり横暴だ」と主張し、後日開かれる理事会で再度、協議することになりました。
2法案の参院先議は、民主党が26日の同理事会で突然提案。参院先議とするためには衆院の合意が必要なため、協議してきましたが、合意には至っていませんでした。
30日の議運委理事会で日本共産党の佐々木憲昭議員は、(1)衆院の合意も得ずに参院に提出された(2)派遣法改定案は「重要広範議案」であり同議案の参院先議の前例はない(3)「地域主権」関連法案は予算関連の政治主導確立法案とセットになっており、予算関連法案は衆院審議が慣例―と主張し、参院に提出された2法案を撤回し、衆院に提出するよう要求しました。
自民、公明の両党も撤回を主張しました。
民主党は、「山岡国対委員長と協議して参院でやることを確認した。合意できないときは、与党の方針でやる」などと野党側の要求を拒否。松本剛明議運委員長は「今日は結論が出ない」としました。
衛藤征士郎副議長は、民主党に考え直すよう求めています。
解説
国会審議 形がい化の危険
政府が提出する法案は、衆院から審議をはじめるのが国会の基本ルールです。憲法60条は予算について衆院の優先審議権を規定しており、予算に関連がある政府提出法案は衆院から先に審議するルールが決められています。
とりわけ政府提出の重要法案は、衆院で先に審議することが当然のこととされてきました。参院から先に審議(参院先議)するのは与野党が合意した場合に限られます。今国会では1日に5法案4条約の参院先議を合意しています。
今回焦点となっている労働者派遣法改定案は、衆院議院運営委員会理事会で「重要広範議案」(首相出席のもとで審議する)と位置づけていたものです。重要広範議案は通常国会で四つ程度とされており、それを参院先議にしたことは一度もありません。また「地域主権」関連法案は、民主党政権が“一丁目一番地”と言って重視しているもので、もう一つの重要広範議案である「政治主導」確立法案(予算関連)と不可分の法案です。これらは、その内容からいって、当然、衆院から審議すべきものです。
民主党の山岡賢次国対委員長は、今回の2法案の参院先議の理由について、「参院選挙があり日程がタイトで、十分な審議をするためだ」などといっています。しかし、与野党の合意なしに政権側の都合だけで勝手に参院先議を決めることになれば、混乱を持ち込むことになり、かえって十分な審議をすることができなくなります。
また衆参で政権与党が多数議席を占めるもとで、国会が単に政府提出法案の追認機関とされ、審議は形だけのものになりかねません。
かつて、自民党政権時代に、与野党合意なしに参院先議を強行しようとしたことがありましたが、野党側の抗議で撤回しています。民主党の議会制民主主義への姿勢が問われています。(国会議員団事務局・白髭寿一)