2010年3月12日(金)「しんぶん赤旗」
「無保険で死亡」増加
高い医療費 保持者も手遅れ例
民医連調査
全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)は11日、経済的な事由で医療機関への受診が遅れ、結果として死亡に至ったと考えられる事例が、2009年の1年間で43に上るとの調査結果を発表しました。保険証を交付されない無保険者が増えているのが特徴です。
国民健康保険料(税)を払えない世帯が約445万に上るもとで、国保の現状を問いたいと、加盟の全事業所を対象に実施したもの。4回目になる今回の調査では初めて、正規の国保証を持っている人や、国保以外の保険の人も対象にしました。
国保料滞納などによって無保険、短期証、資格証明書(窓口でいったん10割負担)となり、病状が悪化し死亡に至ったと考えられるのは33例です。その7割、23例は事業所がかかわった時点で無保険でした。
50、60代が8割を占め、最年少は39歳。8割が無職と非正規雇用です。会社の寮に住み込みの40歳男性の場合、非正規雇用で保険がなく、重篤な肺結核で死亡しました。20例はがんで死亡に至り、その大部分は初診から数カ月、短い人は3日後に亡くなっています。
正規の国保証などを持っていたのに受診が遅れたのは10例。経済的困窮のためすい臓がんの治療(抗がん剤)を中断し、亡くなった59歳男性も国保証をもっていた一人です。多くは重い窓口負担が受診を妨げているといいます。
全日本民医連は、事態を緊急に打開するために、▽国保では、すべての人に正規の保険証を交付する▽窓口での一部負担金を少なくとも3割から2割に軽減する―など8項目の緊急提言をおこなっています。
全日本民医連の長瀬文雄事務局長の話 私たちの医療機関に無保険で受診する方が多いことからも、実際に保険証がない人の数は相当数に上ると考えられます。皆保険制度がなだれを打って崩れてきています。国をあげて無保険者の実態を調査し、手を打つことが緊急に求められています。
死亡した事例
●無保険の人
▽長野の39歳男性 幼少時に親と生き別れ、15歳で養護施設を出たあと、飲食店の住み込みなどで全国を転々とした。国保の加入期間は「2カ月ほど」。初診の2カ月前から自覚症状があったが、「保険証がないから」と受診せず、肺がんが手遅れに。7カ月余でなくなった。男性は生前、「保険証がなかったら病院へはこれない。自分みたいな人は周りにいっぱいいた」と話していたという。
▽千葉の61歳男性 50代後半で失業。白内障が進み、全盲状態になったが、保険証をもたないことを理由に受診せず。舌の進行がんも視力障害のため確認できず、初診後4カ月余で死亡。
●正規の保険証を持っていた人
▽東京の69歳男性 生活保護を受けていたが、妻の障害年金が出ることになり中止に。生保受給ぎりぎりの生活で、胃がんの治療を1年間中断。再発し、入院後8カ月で死亡。
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