2010年3月9日(火)「しんぶん赤旗」

高校無償化は何のためか

新たな差別生む

「朝鮮学校除外」


 政府・与党は今週中にも高校無償化法案について衆院を通過させようとしています。同法案そのものは、高校や大学の学費無料化をめざす国際人権規約に沿うものであり、教育の機会均等を保障するうえで積極的な意義をもっています。

 鳩山由紀夫首相自身、衆参両院での就任後初の施政方針演説(1月29日)で、「生まれくるいのち、そして、育ちゆくいのちを守りたい」「未来を担う子どもたちが、自らの無限の可能性を自由に追求していける、そんな社会を築いていかなければなりません」「すべての意志ある若者が教育を受けられるよう、高校の実質無償化を開始します」と述べ、衆院選マニフェストの公約である高校授業料無償化実現を約束しました。

 ところが、北朝鮮の「拉致問題」などを理由に、閣僚から「朝鮮学校を無償化の対象としないよう努めている」(中井洽拉致問題担当相、2月17日)などの発言が飛び出し、鳩山首相も「そのような方向性になりそうだ」「中井大臣の考え方は一つあると考えている」(2月25日)と理解を示したのです。

 政府の高校無償化法案は、公立、私立の高校とともに、「高校課程に類する各種学校」を対象とすると明記。予算案の文科省予算にも朝鮮学校やブラジル人の学校のほか、多国籍の子どもが通うインターナショナルスクールなども対象とする予算が組まれています。実際、朝鮮学校では、朝鮮史や朝鮮語の授業以外は日本の学習指導要領に準拠した教科書が使われ、国公立大学を含むほとんどの大学が朝鮮学校生徒の受験や入学を認めています。

 朝鮮学校の生徒の比率も、朝鮮籍と韓国籍がほぼ半分ずつを占め、他の数%を日本人や他の国籍の生徒が占めるなど、多様な構成になっています。特定の国との関係だけを理由に排除することは現実的ではありません。

 法案への世論の注目が集まるなか、なぜ突然「朝鮮学校除外」論が飛び出したのか―。

 拉致問題などをめぐり、朝鮮学校の生徒たちは、いわれのない偏見と差別を受けています。4日、国会内で高校無償化法案の超党派勉強会に集まった保護者や生徒らからは、民族服チョゴリの制服を着て通学することさえ勇気のいる実態などを異口同音に訴えました。母親の1人は、高校無償化の問題に触れて、「なんで僕たちは“除外”されるのか」という高校生の息子の疑問を涙ながらに語りました。

 もし、鳩山政権が、「朝鮮学校除外」を強行するようなことになれば、それは「すべての意志ある若者」に教育の機会を与えるという自身の理念を投げ捨て、教育行政に新たな差別を持ち込むことになります。同党の生方幸夫副幹事長も勉強会で、朝鮮学校除外は「新たな差別を生む」と批判し、鳩山首相に「友愛の精神に反する」と異を唱えたことを明らかにしました。

 東京朝鮮中高級学校の高校3年生が卒業を前に取り組んだ無償化除外反対の街頭署名には、2日間で5000人の署名が寄せられました。慎吉雄校長は「本当に多くの日本の人が、署名だけでなく、大きな声援を送ってくれた」と喜びを語ります。国際人権規約にも逆行し、教育に新たな差別をもたらす朝鮮学校除外は、許されません。(信)



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp