2010年2月1日(月)「しんぶん赤旗」

NHK日曜討論

小池政策委員長の発言


 日本共産党の小池晃政策委員長が1月31日のNHK「日曜討論」で行った他党出席者との討論での発言の詳報は次のとおりです。


施政方針演説

「いのちを守る」と言いながら、そのための具体策なし

 「いのちを守りたい」を連発した鳩山由紀夫首相の施政方針演説(29日)について、野田佳彦財務副大臣(民主党)は「思いがいっぱい詰まった、格調の高い演説だった」と持ち上げました。自民党の与謝野馨衆院議員は「共産党のスローガンにも“くらしといのちを守る”というのは、ずいぶん前から出ていた」と発言しました。小池氏は次のように述べました。

 小池 総理の願望は語られたが、国民が聞きたいと思っていることについての答えがなかったと思うんです。たとえば、深刻な経済危機から暮らしをどう立て直すのか、普天間基地の問題をどう解決するのか、そのための具体的なプログラムが見えてこなかった。

 いのちを守るというのであれば、社会保障予算の連続削減の傷跡をしっかりふさぐ必要があるのに、たとえば後期高齢者医療制度については、言葉すらありませんでした。具体策が求められているのに、中途半端、先送りの中身だと思います。

 小沢幹事長の疑惑について一言もなかったのも異常でした。

 高校授業料無償化など国民の要望を反映している部分もありますが、全体としては日本を外交、内政ともにどういう国にするのかというビジョンが伝わってきませんでした。

政治とカネ

政治的道義的責任をただせ――小沢氏は国会で説明を

 民主党の小沢一郎幹事長の土地購入資金疑惑で、社民党の阿部知子政審会長が「背後には(検察との)権力闘争があるのかも」などと発言。小池氏は、「権力闘争どころか、税金の還流だ」と指摘し、次のように述べました。

 小池 結局、公共事業受注企業から政治家の懐に金が還流していたのではないかという疑惑には答えていません。水谷建設関係者は5000万円を2回渡したと証言しています。これは、私たち(「しんぶん赤旗」)が直接取材した結果です。東北地方では、小沢事務所が出した「天の声」によって公共事業受注が決まり、そこから献金が回っていたのではないか。一方で税金の無駄遣いを正すといいながら、こういう問題を解明しなければ、むなしいだけです。

 たとえ刑事訴追の対象にならなくても、政治的、道義的責任はあるし、国会はこれまでこういう問題では、司法との“車の両輪”できちんと解明してきた経験があるわけですから、きちんと国会に出てきて説明すべきです。

 民主党も社民党も野党のときには自民党に対して厳しく(説明責任を果たすよう)要求していたわけですから、参考人招致を必ず実現するべきです。

来年度予算案

後期高齢者医療制度廃止先送りなど国民の暮らしを守る中身不十分

 2010年度予算案について、野田氏は「コンクリートから人へ」の予算だと強調。小池氏は次のように述べました。

 小池 国民の願いを実現する内容も含まれているとは思うんです。公立だけですが高校授業料を無償にし、肝炎患者の負担軽減もあります。ただ、“自公政治を転換してほしい”という国民の願いからみても、いまの経済危機から暮らしを守るという点でも、きわめて不十分です。

 たとえば、後期高齢者医療制度ですが、これは即時撤廃ではなく、先送りです。4月からの保険料値上げを抑えるための国庫負担も取りやめになってしまいました。障害者自立支援法は、300億円あれば、住民税が非課税の低所得者の応益負担をなくせるといっていたのに、100億円しか予算をつけません。生活保護の母子加算復活はよいのですが、同時に廃止された老齢加算については、まったく触れていない。不況にあえぐ中小企業からは“なんとかしてくれ”という声が上がっているのに、この予算額もほとんど自民党時代のままです。

 そういう意味では、どれも中途半端か先送り、あるいは抜け穴だらけで、これではやはり、いまの国民の願いに応えるものではないと思います。

子育て支援

保育所増設など仕事も雇用も生む施策を

 小池氏は、「子ども手当」についても、次のように指摘しました。

 小池 雇用が安定していて、保育所などにも不安がないなかで「子ども手当」が出るのであれば、効果があると思うんです。でも、その不安があるもとでは、いま、学資保険なんかがすごく期待しているように、結局、貯金に回ってしまうのではないでしょうか。

 子育て支援として現金給付を拡大することは大事だと思います。ただ、それは保育所などの支援とセットでやるべきです。たとえば保育所を10万人分つくる建設費というのは、国の見積もりで1700億円なんです。これをやれば、地域の業者に仕事ができます。保育士さんの雇用が増えます。そして10万人のお父さん、お母さんが仕事に就けます。財源が限られているときには、こういう二重三重に役立つことを、よく考えてやるべきです。

 そういう点では、子ども手当を口実にして増税をやるなどというのは、とんでもない話です。

「財政健全化」

消費税増税ではなく、ゆきすぎた大企業減税にメスを

 与謝野氏は、「総理は税制の議論にフタをしてしまっている」と発言し、消費税を含む税制の「抜本改革」が必要だとの議論を展開。司会者が、自公政権が改定した所得税法に2011年度までに消費税を含む税制の「抜本的改革」のための「法制上の措置を講ずる」という付則があるが、「これは生きているのか」とただしたのに対し、野田氏は「まだ法律は変えていないから、生きている」と発言しました。

 小池氏は次のように指摘しました。

 小池 野田さんから、所得税法の付則は「生きている」というお話を聞いて、私びっくりしているんです。そういうことになると、任期中には消費税を上げないという(総選挙中の民主党の)言明と矛盾するわけですよ。私は当然、与党はあの付則を削除するものだと思っていたんですが、これでは消費税増税ということになってきます。

 この国債44兆円の原因は何なのか。37兆円まで税収が下がったことです。これは1985年の水準です。当時は消費税なかったんです。GDP(国内総生産)はいまの6割だったんですよ。そのときの水準にまでなった。結局、負担能力に応じて負担されていない。だれが負担していないかというと、1985年の法人税は12兆円。来年度の見込みは6兆円ですよ。GDPが6割のときの半分の法人税になっている。こういう行き過ぎた大企業減税の積み重ねが、いまの財政に大穴を開けたわけですから、ここはやはり見直すという議論が必要です。私は、いまの(野田氏の)発言だと、消費税増税を前倒しでやるということになりかねないと思います。

 「付則は削除しないのか」と問いかける小池氏に対し、野田氏は「(削除の可能性は)当然ある」と述べながら、「われわれの税制改革の考え方をこれから議論しながらの判断だ」と述べ、削除は確約しませんでした。

「新成長戦略」

大企業の巨額の内部留保――この最大の「埋蔵金」を国民に還元を

 鳩山政権が昨年末に発表した「新成長戦略」について、小池氏は次のように述べました。

 小池 「新成長戦略」のなかで、「構造改革の名の下に選ばれた企業に富が集中した」ことで「格差が拡大した」とありますが、これは正しい“診断”だと思うんですよ。ところが、それに対する“治療方針”が出てこない。

 デフレギャップ(供給過剰=需要不足の規模)が40兆円というときに、多少の財政出動したからといって、それはなかなか解決しません。どこに原因があるのかといえば、この間、雇用者報酬が減ってきた国は、OECD(経済協力開発機構)加盟国では日本だけです。結局、大企業に富が集中している。内部留保など10年で2倍になった。企業全体で400兆円です。「埋蔵金」というんだったら、大企業の内部留保こそ最大の「埋蔵金」だし、ここからしっかり労働者や下請け中小企業に回すという処方せんがなければ、いくら正しい“診断”をしても、絵に描いたモチです。労働者派遣法の抜本改正や最低賃金引き上げ、あるいは下請け中小企業をしっかり守っていく、そういったルールをつくるべきです。

  野田氏が、「企業の収益が上がったけれど、派遣(労働者)に反映されなかったという認識は同じだ」と発言。小池氏は「だから、そこにしっかり回す仕組みをつくりましょうよ」と強調しました。

「まず企業」では自民党政権と同じ――派遣法の抜本改正を先送りするな

 国民新党の下地幹郎政調会長が、「派遣法を改正しても企業がちゃんとできるような環境をつくってから、税制を改める」と発言。小池氏は次のように反論しました。

 小池 いま下地さんは“まずは企業”だといいました。企業にお金がいくようにしないと労働者に回らないと。しかし、それは自民党がずっとやってきて、それが破たんしたんです。(下地氏「派遣法を今度変えるんでしょう」)変えるといっても、3年後、5年後に先送りじゃないですか。農業に、介護に、雇用を移動するということはいうんだけど、非正規から正規に移動するということをいわないじゃないですか。3年後、5年後ではなくてすぐにやるということこそ、私はいま成長戦略として必要なことだと思います。



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