2010年1月30日(土)「しんぶん赤旗」
保育「増員」 規制緩和で
政府が「子育てビジョン」
政府は29日の閣議で、今後5年間で取り組む少子化対策をまとめた「子ども・子育てビジョン」を決定しました。2014年度までの各種施策の達成目標を掲げ、認可保育所の定員を毎年5万人ずつ増やして241万人に、保育サービス提供割合を現在の24%から35%に引き上げるとしています。
しかし、保育サービス拡大の具体策としては、保育制度「改革」を含む新たな包括的・一元的制度の構築をあげ、昨年12月に決定された「緊急経済対策」「新成長戦略」にもとづいてすすめるとしています。
両文書は、保育サービスの量の拡大のために、株式会社など民間企業の参入促進を進めるという考え方に立ち、そのための規制緩和を求めています。また、保育への公的責任を大幅に縮小し、保育所入所を保護者の自己責任にする保育事業者と保護者の「直接契約制」など、現行の保育制度の大改悪の方向を盛り込んだものです。
「子ども・子育てビジョン」は、「社会全体で費用を負担する仕組み」で「財源確保を図りながら」、新たな制度について11年の通常国会までに関連法案を提出するとしています。その際には、地方が実施するサービス給付の「国と地方の役割分担の検討」も行うとし、子育て施策を地方負担でやらせる方向もにじませています。
放課後児童クラブは小学1〜3年生の32%の利用を目指すとしています。
解説
旧政権の路線促進
民主党政権が29日に出した「子ども・子育てビジョン」は、文書の冒頭で「チルドレン・ファースト」(子ども最優先)を掲げ、「子どもを大切にする社会をつくりたい」「子どもにとって安全で安心な社会」とうたっています。
「ビジョン」に盛り込まれた保育所待機児童の解消や、延長・病児保育、放課後児童クラブの受け入れ拡大も切実に求められていることで、数値目標を掲げて取り組むのは必要なことです。
しかし問題は、どうやって目標を達成するかという中身です。「ビジョン」が打ち出した方向は、自公政権以来すすめられてきた保育の規制緩和であり、保育を営利企業のもうけの場にする制度改悪です。
いますすめられている規制緩和は、保育にかけるお金を節約するために、子どもの発達にとって最低守るべき基準である保育最低基準を引き下げるというものです。子どもをすし詰めにすることや給食の外部調理の容認、園庭がなくてもよい、高層ビルでの避難階段の規制の緩和など、子どもの命と安全を脅かし、発達に影響を与える規制緩和がすすんでいます。こんなやり方のどこが「チルドレン・ファースト」といえるのでしょうか。
待機児を解消するために必要なのは、国の責任で認可保育所をきちんと増やすことです。まがりなりにも「経済大国」という日本で、なぜそれができないのか。政権の位置づけが間違っているからです。「子ども第一」を掲げながら子どもの命を脅かすようなやり方はやめるべきです。(西沢亨子)