2010年1月27日(水)「しんぶん赤旗」
米軍基地いらない
鳩山政権は名護の審判受けとめよ
選挙前「思いを斟酌」
米軍普天間基地の撤去に代わる新基地建設が狙われてきた沖縄県名護市の市長選で、新基地建設反対をかかげた稲嶺進氏が勝利しました。「新基地建設を押し付けてきたこれまでの日米政府にたいする名護市民の断固とした審判を示すもの」(日本共産党の市田忠義書記局長)であり、鳩山政権は、この民意を受け止め新基地建設を断念する決断が求められています。
地元紙も「日米両政府とも前政権が合意した名護市辺野古への普天間移設計画をごり押しすることはもはやできない」(沖縄タイムス26日付社説)と指摘しています。
ところが、鳩山政権はこの審判に誠実に向き合おうとしないばかりか、辺野古への新基地建設という現行案を排除しないという“予防線”をはることに懸命になっています。
鳩山由紀夫首相は25日、選挙結果を「一つの民意の表れ」としたものの、「ゼロベースでこの問題を国が責任を持って5月までに結論を出す」と表明。平野博文官房長官にいたっては、同日、「(選挙結果を)斟酌(しんしゃく)してやらなければならない理由はない」などと民意を無視する暴言を吐きました。26日も同様の発言をくり返しました。
鳩山首相は昨年11月14日には「名護市長選の結果に従って方向性をもう一度見定めていく」と言明。市長選告示を目前にした15日には、「名護の思いも斟酌しながら結論を」としていました。にもかかわらず、選挙で結論が出た途端、「国が決める」「(民意を)斟酌しない」などというのは、名護市民の審判に対する重大な背信です。
名護市は、1996年のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意以来、新基地建設をごり押しする日米政府のもとで、世論が二分されるという苦悩を続けてきました。今度の審判は、「13年間『アメとムチ』で、基地押しつけ政策に翻弄(ほんろう)されてきた名護市民の怒りが噴出した結果」(日本共産党の赤嶺政賢衆院議員)です。「基地のない沖縄・日本」を求める名護市民の鮮烈なメッセージを受け止められないとしたら、政権を担う資格はありません。
鳩山政権が、普天間問題で迷走を続けたうえ、名護市民の審判を受け止めようとしない背景には、5月までに「移設先」を決定するという方針があります。「国の責任」を強調するのも、「(移設)候補地」の地元の了承を5月までに得るのは事実上不可能だからです。「『移設』ができなければ普天間居座りとなる。それは政権にとって極めて重大なダメージだ。グアム移転を簡単にアメリカが受け入れるはずはない」と吐露する民主党議員もいます。
「海兵隊は抑止力として必要」「日米安保がある以上、基地提供は必要」という“呪縛(じゅばく)”に縛られた「移設条件付き返還」論の限界です。
民主党内にも、「政権がなかなか方向性を打ち出せない中で住民自身が進むべき道を示した。重く受け止めるべきだ」(別の中堅議員)という声はあります。いまこそ、名護市長選の勝利を受け、新たな段階で、普天間基地無条件即時撤去の世論をさらに広げるときです。(中祖寅一)