2009年12月28日(月)「しんぶん赤旗」
住宅手当 求職者に厳しい要件
希望者の大半 申請できず
自治体も使いづらさ指摘
厚労省「改善必要か検討」
仕事とともに住居を失った求職者に国が家賃を支給する住宅手当制度(最大6カ月間)が10月から始まりましたが、受給要件が厳しく利用が広がっていません。自治体の申請窓口では、必要な書類がそろわないことなどを理由に希望者の大半が申請できずにいます。厚生労働省も使いづらさを認め、改善に向けて調査を始めました。(本田祐典)
多くが対象外
「通帳がないとダメだって言われました」。東京都内で路上生活の55歳男性が肩を落とします。今月中旬、自治体の住宅手当窓口を訪ねましたが、預金通帳など収入状況を確認できる書類を持っていないことから申請できませんでした。
住宅手当の申請には(1)離職後2年以内(2)住宅を喪失または喪失の恐れがある(3)収入がない(4)ハローワークに求職登録―など要件をすべて満たした上で、身分証明書や通帳が必要です。
東京都の場合、10、11月で、住宅手当を希望する相談は4148件(のべ数)ありました。それに対し、申請できたのは884人と約2割にとどまりました。繰り返し窓口を訪ねた相談者の存在を相談件数から差し引いても、多くの受給希望者が門前払いになっています。窓口担当者は「相談者の多くが要件を満たさない」(葛飾区)、「必要書類を用意できない人が多い」(豊島区)と説明します。
かみ合わない
支援の内容にも自治体側は「一緒に利用する他の制度とかみ合っていない」(新宿区の担当者)と注文をつけます。アパートへの入居を希望する人の場合、手当の申請と同時に社会福祉協議会かハローワークで敷金・礼金など入居費用の融資を受ける必要があるからです。相談者は複数の窓口を何度も往復し、融資の審査が終わるまで約1カ月間待たされます。
また、家賃の支払いに困って窓口を訪ねた人の場合、すでに滞納した家賃は支援の対象外で「結局は退去せざるをえない」(荒川区の担当者)と救済できないケースが出ています。
厚労省は「相談件数に対し申請が少ないことは認識している。要件や必要書類など利用を妨げるポイントを調査して改善が必要か検討する」(保護課の担当者)としています。
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