2009年12月24日(木)「しんぶん赤旗」
雇用破壊現場から
常用型派遣の大量解雇続出
企業 削減数決め退職迫る
労働者「使い捨て」に反撃
期間の定めのない常用型の派遣社員として働いているコンピューターのソフト開発や機械設計の技術者が大量解雇されています。労働組合に加入し、解雇撤回を勝ち取るなど、労働者の反撃の動きが続いています。(染矢ゆう子)
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労組に入って
1万人以上が働くソフトウエア関連のグループ企業(東京都中央区)では、4月からグループ全体で2000人以上が退職に追い込まれました。
グループのある会社では、9月初めに派遣先との契約が解除になり、待機状態になった男性(47)=神奈川県=が2週間後の同月14日、退職勧奨を受けました。
男性は、1人でも加入できる組合に加入して団体交渉を行い、退職勧奨を撤回させ、休業中の補償を6割から8割にさせました。組合は業務再開を求めて、交渉しています。
男性は「ほかに待機している人はほとんど切られていなくなりました。新入社員30人が教育を受けていましたが、研修中に退職勧奨を受け、何人かいなくなっています。女性が3人支店に入りましたが、2人は8月中に切られました」と話します。
厚生労働省によると、昨年11月から今年4月までに派遣先との契約を切られた、期間の定めのない「常用型派遣」の労働者のうち、7割が派遣会社も解雇されました。雇用が継続されるのは22・4%にすぎません。
あっせんせず
派遣大手のスタッフサービス(東京都千代田区、資本金3億円)の技術系部門、エンジニアリング事業部では、退職勧奨だけでなく、大規模な解雇が続いています。
機械設計の技術者として三菱重工に派遣されていた男性(42)=名古屋市=は、2月、三菱重工との契約が3月末で切れることを伝えられました。後日、ス社は、男性に契約終了後、3カ月の待機期間の経過を待って解雇されるか、3カ月分の給与とボーナスを受け取って退職するかの二者択一を迫りました。
男性が「次の派遣先を探してほしい」と要求しても、派遣先のあっせんは行われませんでした。男性は7月3日、「相当期間派遣就業先確保の努力を行ったが、就業先を確保できない」という理由で解雇されました。
ス社の常用型部門は06年4月に全国展開を始め、2年後(08年4月)には5882人まで急成長。それを「09年4月には4328人まで削減した。2010年4月までに3000人体制に絞り込む」(広報部)といいます。
ス社は本紙の取材に対し、「金融危機以降、需要が減ってしまった。一定の条件で派遣先がないという状況の中でご理解をいただいたなかで、一定の方に退職していただいている」といいます。
男性は11月4日、解雇無効を求めて裁判に訴えました。代理人の「明玉(ぺ・ミョンギョク)弁護士は「派遣だからといって他の正社員と比べ、身分保障が低くてよいわけがない。『使い捨て』に対しては当然企業の責任が問われるべきです」と指摘します。
無効勝ち取る
旧グッドウィル・グループのラディアホールディングス(東京都港区)は技術者を派遣していた3社のうち、「常用型派遣」で派遣先が見つかっていない「待機社員」4000人を4月15日付で解雇しました。
そのうちの1社、「テクノ・プロエンジニアリング」(同)を解雇された神奈川県横須賀市の男性(39)が解雇は不当として、同社を相手に解雇無効と賃金支払いを求めた仮処分申請で、横浜地裁は7日、解雇は無効として月額29万5500円の支払いを命じる決定を出しました。
常用型派遣 派遣会社に常時雇用されている労働者。「仕事がないときも派遣会社から給与が出る」と宣伝されています。常用型のみを派遣する特定労働者派遣事業の2008年度の年間売上高は前年比44.8%増と急成長。新卒学生を大量採用し、ハローワークに常時求人があり、技術者への執ような勧誘も行われていました。実際は、派遣先がなければ退職勧奨、解雇という「モノ扱い」が横行しています。
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