2009年12月11日(金)「しんぶん赤旗」
何狙う保育「改革」
ビジネスチャンス拡大
鳩山政権は、8日閣議決定した「緊急経済対策」に「保育分野の制度・規制改革」を盛り込みました。「平成23年(2011年)通常国会までに所要の法案を提出する」と、期限を切って推進する構えを見せています。これは何を狙うものか。政権の基本姿勢にかかわる問題です。
「緊急経済対策」の「保育分野の制度・規制改革」部分は、自公政権時代に財界仕込みの「構造改革」の扇動役を果たしてきた「規制改革会議」(議長=草刈隆郎日本郵船株式会社取締役・相談役)の提言(4日)を、そのまま引き写したような中身です。
忠実になぞる
たとえば、規制改革会議は提言で、保育制度について「利用者自らが保育所に直接申し込み、契約を結ぶ利用方式を導入すべき」だと主張。続けて、「保育に欠ける要件の見直し」「利用者補助方式への転換」「保育料設定の柔軟化」などを求めています。
これに対し、「緊急経済対策」も、「利用者と事業者の間の公的契約制度の導入」「保育に欠ける要件の見直し」「利用者補助方式への転換」「保育料設定の在り方について…検討」と、規制改革会議の提言を忠実になぞった形で課題を列挙しているという具合です。
また、規制改革会議は、施設整備費補助が株式会社には出ないことや、運営費に使途制限があることなどを、保育への企業参入の障害に数え上げ、「イコールフッティング(=設置主体間の公平化)による株式会社等の参入促進」を強く求めました。
「緊急経済対策」も、「イコールフッティングによる株式会社・NPOの参入促進」を提唱。「施設整備補助の在り方、運営費の使途範囲」などを「検討する」としています。
規制改革会議の提言では、さらに「幼保一元化」も提案。「緊急経済対策」には「幼保一体化」が盛り込まれています。「一体化」は民主党がマニフェストなどで使ってきた言葉で、中身は「一元化」と変わりません。
要するに「緊急経済対策」は、国のお金はなるべく使わずに、規制緩和で民間活力を導入し、経済の活性化を図るという「成長戦略」の一環として、保育「改革」を断行しようとしているのです。本文でも、「できる限り財政に依存せず」に「制度・規制など『ルールの変更』」によって「国民が持っている潜在力」を発揮させ、「景気回復を目指す」と、“狙い”が明記されています。「国民」という言葉でオブラートにくるんでいますが、一皮むけば、「改革なくして成長なし」と叫び、「民間の自由な経済活動を阻害する規制を撤廃します」(骨太方針2001)と打ち上げた小泉内閣の路線と瓜二つです。
民間企業のビジネスチャンスを広げることだけに目がいっており、子どもや保護者の視点は皆無です。質の守られた、安心して預けられる保育所を、国や自治体の責任で増やしていくという立場は、どこにもありません。
「生活第一」?
政権交代は、経済効率優先で国民生活をないがしろにしてきた「構造改革」路線への、国民の怒りが起こしたものでした。それなのに新政権が「構造改革」路線と決別できず、役割を終えたはずの規制改革会議の“復権”すら図るのでは、「国民の生活が第一」という約束が泣くというものです。国民の厳しい批判は免れません。(坂井希)