2009年11月13日(金)「しんぶん赤旗」
子の安全 国の責任放棄
保育所 避難・耐火基準撤廃
厚労省検討 “庭なし”“高層”も
政府の地方分権改革推進委員会(委員長=丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)が認可保育所の国の最低基準の撤廃を勧告したのを受け、厚生労働省が避難用の外階段などの設置、耐火、医務室や園庭の設置などについて、全国一律の最低基準をなくし、地方自治体の判断に任せる方向で検討していることが12日までに分かりました。
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長妻昭厚労相は、東京など一部地域に限り、保育室の面積の最低基準を地方に委ねることをすでに表明しています。それにとどまらず、子どもの命にもかかわる重大な規制緩和が、全国規模で検討されていることになります。
現行基準では、2階以上に保育室を置く場合は耐火建築物または準耐火建築物であることや、2方向の避難経路を確保すること、4階以上の場合は避難用に外階段を設けることなどを定めています。従来の認可保育所では、大勢の乳幼児を速やかに避難させるために、2階から園庭になだらかな滑り台を設置するなどしています。
また、現行基準では、2歳以上の幼児を入所させる場合は、子ども1人につき3・3平方メートル以上の屋外遊戯場(園庭)を設けることとされています(近くの公園などでも代用可)。園庭の設置義務がなくなれば、近くに公園もないビルの中などにも、認可保育所をつくれることになります。
厚労省の担当者は本紙に対し、「今までは4階以上の保育所は望ましくないだろうということで、国としてはあまり検討してこなかった。基準を地方の条例で決められるようにすれば、自治体が『高い建物だが安全だ』と判断できる余地が出てくる」と語りました。
東京都が独自の基準で設置している認証保育所では、常時火を使う飲食店の上階に保育所がつくられた例もあります。最低基準の緩和で、雑居ビル内の保育所が広がっていく恐れもあります。
改善こそ必要
全国保育団体連絡会副会長・上野さと子さんの話 厚生労働省の検討内容に驚いています。避難用の外階段や耐火上の基準、医務室や園庭の設置についての国基準をなくすのは、乳幼児期の子どもの生命と健康、安全を守ることに国が責任を負わなくなる、とんでもない話です。
幼い子どもは、地震や火事などの災害時に、一人では避難できません。医務室や園庭は、子どもが1日8時間以上生活する場所である保育所に、必要不可欠なものです。
最低基準は現状でも低すぎるもので、改善こそ必要です。