2009年11月5日(木)「しんぶん赤旗」
旧来の従属外交転換せよ
普天間基地問題
県民意思「たらい回し反対」
笠井議員の質問 衆院予算委
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「普天間基地の即時閉鎖・撤去が沖縄県民の断固たる意思だ。この思いをしっかり受け止め、本腰で対米交渉を行うべきだ」――。4日の衆院予算委員会で質問にたった日本共産党の笠井亮議員は、沖縄の米軍普天間基地問題を取り上げ、基地たらい回しを許さない県民の強い思いを背に鳩山政権に迫力ある質問で迫りました。
世界に例ない危険な基地
笠井氏は、人口9万を抱える沖縄本島中部・宜野湾市のど真ん中に居座る普天間基地がいかに危険か、写真パネルを示し説明しました。
▽全長2800メートルの滑走路をもつ基地は市面積の25%を占める▽米軍ヘリは住宅地上空を低空飛行で訓練し、年間の推定離着陸は4万5000回以上▽04年8月には沖縄国際大学へのヘリ墜落事故が発生――。
これら異常な実態を告発した笠井氏は、「世界に例をみない危険な基地は猶予なしになくさなければならない。県民の総意だ」と早期の基地撤去を要求しました。
公約違反の容認は無責任
民主党が、普天間基地の「県外・国外移設」を選挙公約として掲げていたことは紛れもない事実です。今年総選挙時の選挙マニフェストでは「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても、引き続き見直しの方向で臨む」とうたい、8月の民放テレビ討論で鳩山由紀夫首相は、志位和夫委員長の質問に「県外・国外が望ましい」と答えたのです。鳩山首相も「選挙で申し上げた言葉は重い」と答えました。
ところが、鳩山政権発足後、ゲーツ米国防長官が10月下旬に来日し、名護市辺野古への新基地建設を強圧的に要求して以来、北沢俊美防衛相、岡田克也外相がそれぞれ、新基地建設容認、米軍嘉手納基地への統合を打ち出しました。
笠井 この問題を直接担当する閣僚が公約と違うことを公に発言し行動し、それを首相は、「構わない」と容認するのは無責任だ。
首相 (移転計画を)見直している最中なので、(公約の)範囲の中だ。
これを受け、岡田外相は「公約と選挙中の発言はイコールでない。混同している」などという暴論を展開しました。
笠井氏は、「選挙で言ったことは公約ではないのか。有権者は何を頼りに候補者と政党を選ぶのか」と厳しく批判しました。
米軍再編は基地拡大強化
ゲーツ国防長官来日後、岡田外相がにわかに言い出した嘉手納基地への統合案。この間、嘉手納基地のある嘉手納、北谷両町の町議会が、「基地負担の大きい町民に新たな犠牲を強いるもので絶対に容認できない」(嘉手納町議会)など発言の撤回をもとめる意見書を可決するなど、地元住民の怒りが燃えあがっています。
一方、名護市辺野古沖への新基地建設問題については、基地建設のため国が進める環境アセスメント(環境影響評価)の手続きがでたらめ、事故を多発しその性能が疑われている垂直離着陸機MV22オスプレイが新基地の主力機となることが判明しています。
笠井氏は、「あらゆる意味で沖縄の負担軽減どころか基地の拡大強化そのもの」と強調し米軍再編計画の欺瞞(ぎまん)性を突きました。
笠井 「いろんな選択肢」というが、県内たらい回ししかみえてこない。首相のいう選択肢は、普天間基地の即時閉鎖、撤去・国外移設について真剣に検討しているのか。
首相 本来ならそうしたい。しかし安保、抑止力があり、代替地が見つからない場合、閉じておしまいというわけにはいかない。
政治生命かけ対米交渉を
笠井氏の追及に、岡田外相は気色ばんで、「安保そのもので共産党と基本的な見解が違う」などと、従来の自公政権かと見まがうような答弁を行いました。
これに対し笠井氏は、嘉手納統合案をめぐり、外相自身が、05年の8月、外国特派員協会の講演で「普天間基地の県外、国外への移設実現をめざし、政治生命をかけて交渉したい」との決意を表明したことなどを紹介、議場からは「おーっ、やってもらおう」との声があがりました。
笠井 政治生命をかけて、県民の立場を尊重し、公約の立場から米側と正面から真剣に交渉するのが外相の役割ではないか。
外相 当時と今日では状況が変わっている。
そこで、笠井氏は、琉球新報と毎日新聞の共同世論調査(10月31日、11月1日実施)で、「県外か国外への移設を目指して米国と交渉すべきだ」と回答した県民が70%、県内移設と答えたのが25%となり、嘉手納統合案については反対が72%、賛成は15%、新基地建設には67%が反対という結果を突きつけました。しかし首相は、「県民としっかりキャッチボールを行い、最終的な結論を出したい」というだけで、最後まであいまいな答弁を繰り返しました。
笠井氏は、政府は日米安保、抑止力の必要性などを唱えるが、沖縄の米海兵隊は、他国への出撃を任務とする部隊で日本を守るものではないと指摘。国民の意思を背景に交渉し、米軍基地を撤去させた例は世界にいくらでもあるとして、「旧来の従属外交を転換し、『基地撤去、国外移設』で正面から米国にぶつけ、対米交渉を行うべきだ」と迫りました。
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緊急措置と抜本策を
雇用問題
「全国延長給付」発動急げ
「失業者をホームレスにしない。この政治の責任は重大だ」。日本共産党の笠井亮議員は4日、衆院予算委員会でこう力説しました。
いま、全国から深夜バスで集まった求職者など、新宿西口のハローワークには連日4千人が殺到。社会福祉事務所にもその日の宿泊先を求めて大勢が順番待ちをしています。
笠井氏は自ら聞き取ったこうした実態を示しながら、「名古屋でも『11月に失業給付が切れる』という人に何人も会った」「政府の緊急雇用対策で救えるのか」と述べ、従来の延長線上ではない緊急措置を迫りました。
その一つが失業給付の延長、なかでも、雇用保険法第27条にもとづく失業給付の「全国延長給付」です。
笠井 こうやって1日過ぎるたびに失業給付が切れている。直ちに発動すべきだ。
長妻昭厚生労働相 限られた財源の中で慎重な判断が必要だ。
笠井 「財源が大変」というが一番大変なのは失業者だ。(失業給付の)積立金には今年度4兆8千億円が残る。まずやるべきだ。
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笠井氏は、日本は主な先進国と比べても失業給付を受けていない人の比率が高いことをパネル(グラフ)で示し、「緊急延長が直ちに必要だ」と重ねて主張しました。
さらに、失業給付を受けていない人を救うという点で、使い勝手の悪い「訓練・生活支援給付金」の改善と拡充も要求。失業者の住まいの確保をめぐっては、雇用促進住宅を積極的に活用するために同住宅を2021年までに全廃する旧政権の閣議決定の撤回を迫りました。
ところが厚労相は、雇用促進住宅について「天下り団体の利権的要素もあり、必要性の低い部分まで拡大してしまった。廃止決定は変えない」などと答弁。現行の部分的・緊急的な活用にとどめる方針を表明しました。
笠井氏は、舛添要一前厚労相でさえ、閣議決定の見直しも含めて検討していたことを指摘し、「あるものを活用すべきだ」と強く求めました。
その上で「こうした緊急措置はどれも法改正の必要ない、政府の決断次第でできることだ」と強調しました。
「非正規切り」やめさせよ
雇用対策では、大企業によるこれ以上の「非正規切り」をやめさせることも待ったなしの課題です。
笠井氏は、「エコカー減税」による増産などによって自動車大手などで広がる再募集では、またしても「非正規切り」を前提にしていることを厳しく告発。トヨタの違法な“契約期間隠し”などもあげて首相に迫りました。
笠井 労働者を、いらなくなったら放り出し、生産が増えたらぜひという。そしてまた放り出す。こんなご都合主義、理不尽を繰り返させていいのか。
首相 景気が少しでもよくなると期間工を雇い、おかしくなったらすぐに切る、いつまでも正社員になれない。これは私も悲劇だと思う。企業、経済界、労組に申し入れたい。
笠井氏は「人員が必要なら正社員こそ増やすべきだ」との労働者の声を代弁しながら、「エコカー減税というがもともとは国民の税金だ。国民の血税で増産してもうけておきながら、『非正規切り』を繰り返す。こんなことが許せるか」と強調。フランスでは大統領がリストラをやめさせるためにルノーに乗り込んだことも紹介しながら政府の姿勢をただすと、首相も「そのように頑張りたい」と述べました。
笠井氏は最後に、「人間らしく働けるルール」をつくる抜本的取り組みを進める必要があると強調。有期雇用の規制と、労働者派遣法の抜本改正を急ぐべきだと力説しました。
全国延長給付 失業手当(=失業給付の基本手当)の全国的な延長制度です。失業の状況が全国的に著しく悪化し、一定の基準にいたった場合、発動することができます。発動の基準や、延長される日数は政令で定められており、法律を変えなくても、閣議決定で政令を改正すれば実施できます。