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2009年10月23日(金)「しんぶん赤旗」

契約期間示さず 最長でも6カ月

期間工募集再開

トヨタよ また使い捨てか

「長く働きたいのに…」


 トヨタ自動車が今月から再開した期間従業員の採用で、肝心の契約期間を示さないで募集し、長くても6カ月の雇用契約しか結んでいないことが分かりました。本紙の指摘に今後は契約期間を明示すると表明しましたが、労働者からは「昨年来の期間工切りに反省もなく、また使い捨てを繰り返すなんて許せない」との声が上がっています。


 トヨタは1600人を採用する計画で、この1年間に雇い止めた期間工約6000人を対象に募集。応募者に雇用条件を示した文書を送るとともに「面接不要」だとして愛知県豊田市内にある社員寮に入り、研修を受けるよう指示しました。

 ところが、雇用条件を書いた文書には肝心の契約期間や更新の有無が記載されておらず、入寮し研修を受けて初めて契約期間が知らされる仕組みになっていました。

 しかも、示された雇用条件で働く誓約書と身元保証人の誓約書は、契約期間を空欄のままで署名なつ印して持参するよう指示していました。労働条件の明示などを義務付けた労働契約法などにも反するやり方です。

 「肝心の契約期間も示さず、『これで来い』なんてバカにしている」と憤るのは、応募した九州の20代男性。「4月末に雇い止めされ雇用保険も9月末で切れた。あれだけ多くの首を切りながら反省もない」

 各人に示された契約期間は4〜6カ月。更新は「する場合あり」となっていますが、「通算して2年11カ月を超えて更新はしない」と明示された文書が配られました。

 6カ月契約を結んだ50代男性は、「半年後に更新されるかも分からない。地元に帰っても仕事はない。できるだけ長く働きたいのに」と顔を曇らせます。

 トヨタ広報部は、契約期間などを明示しないことについて「文書の送付が遅れた」と弁明し、今後は明示すると表明しました。しかし、すでに契約期間も分からず応募した人は600人。依然として契約期間が示されていない人もいます。

 トヨタ自動車は昨年、「最高2年11カ月働ける」といって募集しながら契約更新せずに次々と雇い止めし、社会的批判をあびました。08年1月に9000人もいた期間工は今年9月末には1200人に激減。ところがエコカーの生産増などを理由に1年もたたずに募集を再開し、今度は契約期間も示さずに募集を行っていたのです。

安定雇用へ正社員増やせ

 豊田市のトヨタ自動車堤工場では、7月から残業と休日出勤が再開されました。

 労働者は「残業は目いっぱいの45分。休日出勤は全体で月2回やっており、フル生産状態になっている」と話します。

 「期間工をあれだけ切っておいてわずか1600人では雇用をまもる社会的責任をはたしたことにはなりません」と語るのは、堤工場で働く正社員の大場博さん。

 「エコカー増産も、減税に押された需要の先食いといわれているように、いつまで続くか分からない。昨年、あれだけ批判されたのに、生産の調整弁としてまたぞろ使い捨てするなど許されません」と話します。

 期間工のなかには、採用するといって入寮したのに健康診断によって不採用にされ、追い返されるケースも出ています。

 東北から来た20代の男性もその一人。「尿酸値が高いといって不採用といわれた。体調は万全で絶対に大丈夫だと思っていたのに、ここまで来て落とされるのは納得いかない」と話します。

 トヨタ広報部は「診断基準を厳しくしていない」と説明しますが、「健康診断で落とされた人は研修途中で抜けていくので分かる。入寮した人のうち約50人〜60人、応募者の1割が不採用にされた。“健康診断が厳しくなっている。採用者を計画より減らそうとしているのではないか”と話題になっている」と話す労働者もいます。

 日本共産党豊田市議団とトヨタ自動車党委員会は14日、工場門前で、「年末にかけて雇用情勢はますますひどくなる。その口火を切ったのはトヨタだった。そのことに反省もなく、再び路頭に迷わせるような状況をつくってはなりません。大企業に雇用をまもる社会的責任を果たさせるとともに、『雇用は正社員が当たり前』の社会にしましょう」と訴えました。

 前出の大場さんはいいます。

 「残業や休日出勤をさせるんだったら、もっと期間工を雇えるはずです。長すぎる労働時間を短縮するためにも、トヨタは正社員をもっと増やし、安定した雇用をつくる社会的責任を果たすべきです」



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