2009年10月1日(木)「しんぶん赤旗」
介護新認定
経過措置きょう解除
軽度化に不安
旧自公政権が4月に導入した新しい要介護認定制度への批判を受けて、従来通りの要介護度を選べる経過措置がとられてきましたが、10月1日から解除されることになります。関係者からは不安の声が上がっています。
介護保険サービスを利用するには、あらかじめ要介護認定を受けることが必要です。認定によって介護にどの程度手間がかかるかをランク分けされ、サービス内容を選ぶことになります。
新認定制度に対しては、現場関係者から「認定が実態を離れて軽度に傾く」との批判の声が上がり、4月の導入直後に経過措置がとられました。
厚労省は新制度を検証した結果、軽度に認定される人の割合が増えたことを認め、批判が集中した新しい認定調査基準の大幅見直し策を7月末に決めました。10月1日以降に新規や更新の認定を申請する人については、この見直し策が適用され、経過措置はなくなります。
認定調査基準は、介護サービス利用者の心身の状態を聞き取り調査する際のルール。見直し策は広範な介護関係者の声を反映し、新基準の問題点を是正するものでした。
しかしなお、要介護認定の1次判定を行うコンピューターソフトの改定の影響など、検証されないままの問題が残され、認定軽度化への不安を招いています。
解説
要介護認定の経過措置解除
全面的な検証が不可欠
要介護認定の新制度は、問題点を残したまま経過措置が解除され、10月から全面実施されることになりました。軽度に認定されるとの批判を受けて厚労省は認定のもとになる調査基準の大幅な見直し策を7月末に決めました。しかし、新制度と見直し策の全面的な検証は行われていません。
厚労省は1万件のシミュレーションを行ったところ、見直し策によって要介護度の分布がほぼ新制度導入前に戻ったと説明しています。しかしこれは机上の試行。実地の調査は行っていません。
新制度ではこの他にも▽要介護認定の1次判定を行うコンピューターソフトの改定▽認定調査の項目数の削減▽2次判定を行う審査会の裁量権の縮小―などが行われました。認定の軽度化にこれらの要素がどのように影響しているのかは、明らかにされていません。
認定審査会の委員を務める東京民医連の石川徹会長は「1次判定のソフトが原因で、おかしな判定が出るケースも散見される」と指摘します。さらに「経過措置がなくなれば、実態に合わない認定が出ても、そのまま適用されることになる。利用者への影響が非常に不安だ」と述べ、不当に軽く認定されることがないのか、事例を集めて検証を行う運動を広げる必要があると話します。
日本共産党は新制度を撤回し、導入前に戻すよう求めています。
厚労省は10月以降の認定結果を集計した上で、改めて検証を行うための検討会を開く意向を表明しています。
一方、「新制度で不利益を被らないよう、利用者に注意を呼びかける必要がある」と指摘する介護関係者もいます。
利用者が従来通りの要介護度を選べる経過措置が実施されていた4〜9月の間も、新規に認定を受けた人は経過措置の対象外で、新制度がそのまま適用されてきました。そのため、不当に軽度に認定されている恐れがあります。厚労省調査でも介護保険の給付が受けられない「非該当」の認定件数が従来の3倍近くに上っています。厚労省も、認定が実情と合わない場合には是正のための区分変更申請を行い、「非該当」に納得できない場合には再申請をするよう、呼びかけています。
10月からは経過措置が解除され、認定を更新する人にも新制度がそのまま適用されます。介護関係者は(1)担当ケアマネジャーの立ち会いのもとで認定調査を受ける(2)自分の認定の情報を市町村に開示させる(3)認定結果に納得できない場合は声をあげる―などの対応が大事だと指摘しています。(杉本恒如)
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