2009年9月6日(日)「しんぶん赤旗」
後期医療 廃止を
世論・運動 広がり急
不服審査1万件超
75歳以上の高齢者に医療差別と負担増を強いる後期高齢者医療制度を、新しい国会で廃止に追い込もうという動きが急速に盛り上がってきています。廃止運動をすすめてきた市民団体や高齢者は、制度廃止へ、いっそう取り組みを強めています。(野村説)
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東京・新宿区に住む男性(78)は脊髄(せきずい)カリエスで障害2級の妻をかかえています。「妻は入院するたびに差額ベッド代として1日1万円を請求される。要介護4で糖尿病も併発しています。私の助けがなければ生きてゆけない。私もいつ倒れるか分からないし、そうなれば悲劇だ」とうつむきます。
憤慨
同制度の導入時、遠藤さんの住む団地の集会所で、行政による新制度の説明会が開かれました。そのとき同制度をめぐって議論になり、ある高齢者が「兵隊に行って青春を失い、年をとれば社会から捨てられる。何たることだ」と腹を立てていたことが忘れられません。「本当に年寄りが粗末に扱われている。社会の末端ほどしわ寄せがいき、介護殺人なども起きている。制度がそこまで人を追い込んできた」。そしてこういいます。「制度を撤廃させ、さらに老人医療の無料化が実現すれば、みんなほっとすると思う」
同区で一人暮らしの女性(79)は、全身の筋肉が、動けなくなるほど痛くなる膠原(こうげん)病多発性筋痛症という原因不明の難病をわずらっています。毎日痛み止めのステロイドを飲んでいますが、副作用で顔がむくみます。毎月の収入は年金の7万円だけ。都営住宅に住んで何とかやっています。
「この制度が導入されるときに政府やマスコミは、『年寄りは用事もないのに病院に行き、税金を無駄遣いしている』と悪者扱いした」と憤ります。「高齢者を優遇し、いたわるのが国の責任のはずなのに裏切られた気分です。共産党は最初から法案に反対していたし、人間も温かくて『すてきなお友達』だと思っています」と語りました。
異例
制度の撤廃を求める声は全国で広がっています。国会請願署名は、野党が共同提案した同制度廃止法案を参議院で可決させ、政府・与党を追いつめる大きな力となりました。医師会や老人クラブなどが厚生労働省にあてた署名も数多く集まりました。同制度にかかわる地方議会での意見書も多数でています。高齢者医療をめぐる不服審査請求は、2008年度で1万398件に及ぶなど異例の規模になっています。
全国老後保障地域団体連絡会(全国老地連)の後藤迪男事務局長は、「日本共産党が最初から法案の本質を見抜き、反対してきた法律を、いま多くの人たちが撤廃を望んでいる。民主党もマニフェストで後期高齢者医療制度の廃止をかかげている。国会では一致できる点ではしっかりと手を組み、最優先の課題として廃案に取り組んでほしい。これからも国や都に働きかけを強めていきたい」と意気込みを語りました。
後期高齢者医療制度 2008年4月1日から施行され、75歳以上の高齢者を他の医療保険から切り離し、全員から保険料を取り立て、受けられる医療内容を抑制することを狙った医療制度。保険料は2年ごとに改定され、高齢化がすすむのに応じて、自動的に引き上がる仕組みになっています。
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