2009年8月11日(火)「しんぶん赤旗」
総選挙 教育費論議が激変
各党、次々 負担軽減を公約
国民と共産党が長年運動
「公立高校生の授業料を無償化」(民主党)、「給付型奨学金の創設」(自民党、公明党)―。総選挙マニフェストで、各党が教育費の負担軽減を掲げています。これまで日本の教育費負担は、学費値上げや奨学金の有利子化など改悪の連続でした。「無償化」や負担減が政治の中心課題にのぼってきたのは戦後初めてのことです。「お金がなければ学べない国でいいのか」という国民世論と日本共産党の長年のたたかいが、劇的な変化をつくり出しました。
主要国で最下位
「日本の政治はずっと教育費の無償化をタブー視してきました。今回の変化は、まるで地殻変動ともいうべき画期的なものです」。長年、日本の教育政策の転換を訴え、運動してきた三輪定宣・千葉大名誉教授は、感慨深く語ります。
歴代の日本政府は“高い教育で利益を得るのはその学生だから、費用も個人が負担すべきだ”という「受益者負担」論の立場を取り続け、学費を際限なく高騰させてきました。昨年2月に衆院予算委員会で、日本共産党の石井郁子副委員長が給付制奨学金の創設を求めたときも、「働ける間は返済していく自己責任も必要」(額賀福志郎財務相)と拒否。自公政権は最近まで、高学費政策を改めようとしてきませんでした。
この結果、国の教育予算はGDP(国内総生産)比3・4%(2005年)で、OECD(経済協力開発機構)加盟の主要国で最下位。この20年余に他国が教育予算を4〜5倍に伸ばしたのに、日本は2倍弱の伸びにとどまっています(グラフ)。
大学の学費は世界一高いうえに、返済不要の奨学金制度もない。高校授業料も、ほとんどの国では無料なのに日本では有料―こうした「世界の異常」がまかり通ってきました。
人権規約を提起
高学費政策に対する学生、国民のたたかいは、1970年代から粘り強く続けられてきました。
89年からは、私学助成の大幅増額や学費の軽減・無償化などを掲げた3千万署名が、毎年国会に届けられました。学生や高校生も、切実な実態と声を、直接、国会や政府にぶつけてきました。
日本共産党はこのたたかいと結び、教育費の負担軽減を一貫して主張してきました。
日本政府が、79年に国際人権規約を批准しながら、高校・大学の学費の段階的無償化を定めた条項を留保している問題も、共産党がいち早く提起。81年1月の参院代表質問で宮本顕治委員長(当時)が速やかな留保の撤回を求めたのをはじめ、繰り返し国会で取り上げてきました。
昨年4月には提言「『世界一高い学費』を軽減し、経済的理由で学業をあきらめる若者をなくすために」を発表。石井副委員長を先頭に国立大学協会や全国の大学関係者と懇談を重ね、共同を広げてきました。
経済危機のなか、ことし3月には「学費が払えず高校卒業、入学できない若者を一人も出さない」緊急提言も出し、高校授業料減免や給付制奨学金の創設などを求めました。
マスコミの論調も変化し、テレビの政党討論番組でも教育費の問題が話題になっています。1日付の東京新聞は「遅すぎた?子育て教育支援マニフェスト」という特集を掲載。「(国際人権規約の学費無償化条項を)留保しているのは、アフリカのマダガスカルと日本の二国だけ」と告発しました。
かじを切るとき
日本共産党は今回の総選挙で、教育費の問題を日本社会のあり方が問われているものと位置付け、政策の転換を訴えています。
三輪氏は「教育は社会づくりの土台であり、あらゆる政策の要です。30年先、50年先を見据え、未来の世代を代弁する政治へ、かじを切らなければなりません。今回の選挙を、その大きな第一歩としていきたい」と語っています。(坂井希)
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