2009年7月26日(日)「しんぶん赤旗」
主張
経済財政白書
転換を拒否するなら退場を
内閣府が2009年版の「経済財政白書」を発表しました。
白書は、現状分析では家計と内需が弱い日本経済の体質を浮き彫りにしている部分もあります。しかし結論では、まともな現状分析についても、無理やり財界の主張と自公政治の枠組みに収まるようにねじ曲げてしまっています。
国際的にも異常な弱さ
非正規雇用の動向、社会保障と家計を分析した第3章には、いくつかの注目すべきデータや分析があります。
例えば雇用を守る規制の強さを国際比較したグラフは、日本がOECD(経済協力開発機構)30カ国の中で下から7番目で、かなり規制が弱いことを示しています。白書は派遣労働の規制緩和や自由化が指標を低下させたことにも触れ、「非正規雇用者の増加が労働所得の格差拡大の主因となっている」と認めました。
白書のデータによると、年金など「公的移転」による所得再分配の効果は、OECD21カ国の比較で日本は19番目の低さです。税による再分配効果は「我が国はOECD加盟国の中で最も小さい」とのべています。白書は、ここ十数年の税制と社会保障制度の改定は、再分配の効果を一段と低下させてきたと分析しています。
白書によると主要7カ国で日本は、税と社会保険料の負担全体に占める低所得層の負担割合が最高で、社会保障給付では低所得層への給付割合が下から2番目です。ここから、日本の低所得層は相対的に「低福祉高負担」の状態に置かれていることが分かります。
家計との関係では、老後の生活不安や年金に対する不安が必要な貯蓄額を引き上げ、さらに医療制度への不安が消費を抑制していると指摘しました。
これらの「経済財政白書」の分析は、日本が世界でも相当に雇用を守るルールが弱く、税制と社会保障による所得再分配の効果が低いことを浮き上がらせています。同時に、財界と自公政治が進めてきた派遣労働の自由化が貧困と格差を拡大し、税と社会保障の改悪が所得再分配の機能をいっそう破壊してきたことを示しています。
自公が社会保障予算の自然増を毎年削減し、暮らしを支える社会保障を切り下げ続けた結果、家計と内需を一段と弱めてきたことも明らかです。
ところが白書は最後に“こんな見方も可能だ”として「就業形態の多様化」は「失業を低下させる」と締めくくりました。「就業形態の多様化」とは非正規雇用の拡大の別名です。失業を減らすことは当然ですが、それで非正規雇用の拡大を正当化することはできません。「正社員が当たり前」の社会にし、ワーキングプアをなくすことは日本社会の喫緊の課題です。
社会保障についても白書は、「信頼感を高める」というあいまいな表現でお茶を濁しました。
「構造改革」への固執
前段でさんざん分析したことと矛盾する支離滅裂さです。貧困と格差を拡大し、経済体質を脆弱(ぜいじゃく)にしてきた「構造改革」路線に、なりふりかまわず固執する姿勢にほかなりません。
消費税増税の計画を含め、暮らしの安心と希望を奪う財界と自公のやり方を根本から転換することが必要です。あくまで従来の路線にしがみつく自公政治は、退場させるしかありません。
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