2009年7月19日(日)「しんぶん赤旗」
社会リポート
都立駒込病院の企業参入事業(PFI)
偽装請負横行の疑い
職場バラバラ 医療の質低下
今年4月から実施されている東京都立駒込病院(東京都文京区、職員数900人弱)の企業参入(PFI)事業による病院内の業務で、違法な偽装請負が横行している疑いが強まっています。病院関係者は「偽装請負は構造的なもの。職場のチームワークをなくし、医療の質を低下させている」と指摘します。(今田真人)
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厚生労働省の東京労働局は、駒込病院のPFI事業について「一般論でいえば、医師や看護師など病院の職員が、委託業者の労働者に、仕事を直接指示したら『指揮命令』になり、偽装請負となる。労働者派遣法に違反する」(需給調整事業部)と指摘します。
実態は不透明
駒込病院内の業務は、医師や看護師の仕事などの一部を除き、東京都から、三菱商事(PFI事業の落札業者)の子会社「駒込SPC」(文京区)に包括して委託されました。同社はその院内業務を18種類に分け、それを個別に12の業者に再委託していることを6月26日、公表しました。(表)
しかし、同病院内で働く委託業者の労働者の実態は不透明なままです。同病院事務局は「3月までの委託業者の従業員は100人〜200人。4月以降はわからない」(同病院事務局)と説明、偽装請負の事実どころか、人数さえ把握していません。駒込SPCは「取材には、いっさいお答えできない」(広報担当者)と話します。
構造的な矛盾
病院関係者の一人は「PFI事業が始まり、病院内の業務は偽装請負だらけになっている」と指摘します。
例えば、病室で看護師が採取した患者の血液などの「検体」を検査室に運ぶのは、委託業者の仕事です。看護師が「これをすぐに検査室に運ぶ必要がある」と判断しても、担当の委託業者の労働者のマニュアルでは手順が決まっており、対応できません。
この看護師は、「検体」が検査室に届くまで時間がかかると変質して正確な検査ができないため、担当でない別の委託業者の労働者に指示し、緊急に運んでもらったといいます。これも、委託業者の労働者に指示したことになり、偽装請負となります。
こうした事例は、ほとんどの業種に共通する構造的なものです。病院内は、職員や委託業者の労働者との連携が破壊され、ばらばらにされています。
無責任な姿勢
東京都の担当者は「駒込病院の委託業務は、あらかじめ定めた作業マニュアルがあるので、病院職員の指揮命令がなくても成り立つ。偽装請負はない」(病院経営本部)と強弁します。
しかし、労働実態の詳しい内容を質問すると、「委託業者の従業員数や労働条件などは把握していない」(同)という無責任な回答が返ってきます。
偽装請負の横行を解決するには、PFI事業を中止するしかないことが浮き彫りになっています。
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