2009年7月13日(月)「しんぶん赤旗」
共産党「学費提言」 発表から1年余
「骨太方針」に軽減の方向明記
世論と運動 政府動かす
石井衆院議員に聞く
日本共産党が「『世界一高い学費』を軽減し、経済的理由で学業をあきらめる若者をなくすために」(学費提言、2008年4月)を発表し、そのなかで学費軽減の運動を呼びかけてから1年余、切実さを増す学費軽減について、石井郁子衆院議員(文部科学委員)に聞きました。
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学費提言は、経済的理由で学業を断念する若者をこれ以上出さないために、高校生、大学生への授業料減免と直接助成制度の新設、無利子奨学金の拡充など緊急に必要な対策を押し出したものです。
小泉「構造改革」による貧困と格差の広がりに加え、昨年秋からの経済悪化のもと、「世界一高い学費」の負担は、高校生や大学生の生活と教育を受ける権利にいっそう深刻な影響を与えています。
昨年春には、千葉や長崎の県立高校で入学金の納付が間に合わなかった新入生が入学式に出席させてもらえなかった出来事が社会問題になり、今年春には学費が未納という理由で卒業証書を渡さない、回収するという、教育の現場であってはならない問題が起こっています。
全日本教職員組合、日本高等学校教職員組合、全国私立学校教職員組合連合の3団体が共同で3月8、9日に行った「入学金・授業料・教育費緊急ホットライン」電話相談には、数日後に迫った学費納入期限を前に、途方に暮れる私立学校の保護者など、非常に深刻で緊急性の高い相談が多くありました。
懇談も重ねた
国会で、こういう声もつきつけて、政府に対策を求めました。
政府の答弁も、「家庭の経済状況等によって修学の機会が失われるということは何としても避けなきゃいかぬ」(2月23日衆院予算委員会、河村建夫官房長官)、「やむをえない理由による授業料の未納は、生徒個人の責任ではない」(3月25日衆院文部科学委員会、金森越哉初等中等教育局長)とのべるなど、以前あった「自己責任」論と比べると、大きな変化が感じられます。
提言を出して以降、労働組合や大学関係の団体と懇談を重ねてきました。
国立大学協会との懇談では、「気持ちはまったく同じ。国公私立いっしょになって、高等教育予算のパイを広げていきたい」との意見がだされ、日本私立大学団体連合会との懇談でも「私たちの考えと大きく変わりません」との意見がだされました。
最近、国立大学協会が、「昨今の経済危機の中で教育の機会の均等を確保するため、授業料標準額の減額、授業料の減免の拡大、奨学金の拡充など必要な措置を早急に講じていただきたい」という要望を政府関係機関に出しました。また、6月24日には、授業料の引き上げを示唆している財政制度等審議会建議に対し、「経済的理由によって大学進学・修学を断念する層の存在に目を向けない財政審の発想は、『教育安心社会』をめざす我が国の在り方に逆行している」と厳しく批判する所見をだしています。
昨年4月から、東京大学が年収400万円以下の家庭の学生の授業料を全額免除する制度を、独自に実施しています。「しんぶん赤旗」の調査でも明らかになったように、全国の大学が身銭を切って、学生への支援をせざるをえない状況です。
全学連も、毎年、学費・雇用黒書をまとめ、告発してきました。私も07年の京都での学費シンポジウムで学生から、カロリーの高い菓子パン1個を昼食にしている話を聞いて、学費のために自分の体を痛めつけなければならない事実が、提言をつくるばねになりました。
格差を認める
国民の世論と運動が、いま政府を、動かしていると思います。6月23日に閣議決定された「骨太の方針2009」は、授業料減免等教育費負担の軽減の方向が明記され、7月3日に出された文部科学省の「教育安心社会の実現に関する懇談会」の報告でも、家計負担の高さと格差を認めるなど現状認識の接近とともに、より具体的に経済支援が盛り込まれています。
私たちは、国立大学の授業料が、過去30年間に15倍に、私立大学も4・5倍になり、物価指数の2倍と比べ、異常な高騰をしていると批判し、値上げに反対してきました。そうした国会での論戦が生きて、2006年以降、値上げをさせていません。国民的な運動の反映ですが、そこから一歩すすんで、授業料標準額の引き下げ、減免の拡大が、国民的な共通の課題になってきたと実感しています。
世界が高校、大学の無償化に向かっているとき、自民党政治は、家庭に「世界一の高い学費」を負担させてきました。問題の根底には、自民党政治のゆがみがあります。学費を軽減し、ルールある経済社会をともにつくっていきたいですね。