2009年6月8日(月)「しんぶん赤旗」
ゆうPRESS
高い学費 もう限界
日本の大学の異常に高い学費が青年の夢や進路を阻み、雇用と景気の悪化が追い打ちをかけています。学費の負担軽減は待ったなしです。学生自治会でつくる全学連(全日本学生自治会総連合)は12、13の両日、学費の引き下げなどを求めて国会要請行動と集会を開きます。高い学費の影響や引き下げへの思いを3人の青年に聞きました。(染矢ゆう子)
お金なきゃ勉強しちゃだめ?
■信州大学農学部3年の男子学生(20)
会社を経営する父の収入がこの不況でさらに落ち込み、昨年冬「学費は払ってあげられない」と告げられました。両親はいつになく暗い表情でした。
奨学金をすべて学費にあて、教科書代や自分の生活費のためバイトを始めました。
毎日遅く帰ってくる父に申し訳ない、と思いつつ大学に通っています。大学と高校の受験を控えた妹と弟が大学に行けなくなるかもしれないのに、勉強する価値があるのか、と思うこともあります。
学生自治会の執行部の一員として、アンケートや大学との交渉をしています。対話すると、家計に負担をかけてしまって申し訳ない、両親がやりくりに苦労していて申し訳ない、と話す学生が多くいます。
私も13日の全国学生集会に参加します。「お金がある人しか勉強しちゃいけないんですか?」と政府に問いたい。
両親の貯金が底尽きた
■経済的理由で大学を退学した男性(21)
昨年、父親に「大学をやめてくれないと生活できない」といわれ、2年で和光大学(東京)を退学しました。
入学したときから、いつかはこうなると覚悟していましたが、「これで終わり」と思うと力がなくなりました。
両親は共働き。しかし父親の賃金が下がり、ボーナスもなくなり、年収は2人合わせても320万円。学費120万円と仕送り120万円など私のための支出は年300万円を超えていたそうです。
両親は、貯金を全部使い果たしました。福井県の実家に戻ると、父親は「ごめんな」と謝りました。
退学し、働き始めると人とのかかわりが減りました。大学ではいろんな人に出会えて友達もできる。学ぶ権利は保障されるべきだと思います。
大学で学費を下げる運動に出合えてよかった。学費が高いことがおかしいなんて考えたこともなかったので、ぐっときました。出合わなければ今も国立大に行けなかった自分を責め、親を責めていたと思います。
睡眠時間は1〜2時間
■関東学院大学工学部2年の女子学生(19)
母親のパート代だけでは余裕はありません。「自分で払うから大学に行くね」といって入学しました。
学費と一人暮らしの生活費を奨学金とバイトでまかないます。学費は年128万円。無利子と有利子を合わせて月16万円の奨学金のほとんどが学費でなくなります。まだ足りないので6月分の奨学金が振り込まれるまで納入を遅らせてもらっています。
週に3〜4日、カラオケ店で深夜バイトをしています。睡眠時間は1〜2時間です。授業中寝てしまうことも多いです。一人暮らしの費用がたまるまでは茨城県の実家から神奈川県の大学まで片道2時間半かけて通っていました。
兄も同じように、学費と生活費を自分で払っています。「やりたいことをやるんだからつらい思いをするのは仕方がない」と思っていました。でも、外国では学費が無償だと聞いて「変えられるかもしれない」と気持ちがラクになりました。
国会要請は授業とバイトで行けませんが、私もできることをやりたい。
運動広がる
学生を中心に「学費を下げたい」の一致点で加入でき、学費引き下げの署名活動などにとりくむ「学費ゼロネット」の結成が全国に広がっています。
現在、京都、東京、大阪、兵庫、千葉、愛知で活動。東京では今年、22学園で1000人以上から実態アンケートを集めています。(グラフ)
吹田市にある大阪大学の学生らでつくるゼロネットOSAKAは、吹田市議会に要請。市議会は全会一致で高学費問題の改善を求める意見書を可決しました。
|
学費ZEROネット東京のアンケート調査に寄せられた学生の声の一部を紹介します。
◆高校の友だちの多くが、学費の問題で進学を断念した(和光大)
◆入学金が準備できず、入学できなかった友人がいる(東京学芸大)
◆兄弟も私立大に通っているので、父が残業を増やし、家に帰ってくる日が週に2〜3日(早稲田大)
◆8人兄弟の友人は、下の子たちを高校・大学へ行かせるため、中卒で働いている(東京大)
◆弟も大学進学を考えているので、親は土日も働こうか悩んでいる。働きづめで病気になってしまわないか不安(東京農大)
◆学校がメーンなのか、バイトがメーンなのかわからない生活(和光大)
◆高校までアメフトをやって全国大会で2位になったが、部費、遠征費を払えないので参加できない(早稲田大)
国会要請ぜひ一緒に
全学連 中央執行委員長
小山 農さん
不況の影響は深刻です。急いで対策をとらないと大学に通えなくなる学生がたくさん出てきます。
2008年に東大で世帯年収400万円以下の学生の授業料免除制度ができてから、他の大学でも独自の負担軽減策ができ始め、学費免除枠の拡大や奨学金の拡充を行うなどの動きが広がっています。しかし、そのとりくみは一部にとどまっています。
12日の国会要請行動では、国の責任ですべての学生に学費負担軽減策を広げることを求めていきます。署名の紹介議員は野党4党に広がっています。
一方、財務省はさらなる高等教育の予算削減と配分の競争化を主張し、来年度以降の学費値上げが懸念されます。学費値上げの再開か、学費負担軽減に踏み出すのかを左右する重要なときです。
12日の要請と13日の集会では、人に言えず抱え込んでいる悩みを相談したり、出し合える場にもしたいと思っています。みなさん、ぜひ要請に、集会に参加してください。
★全学連国会要請行動
12日(金)
午前9時30分 会派要請
午後1時 国会議員要請
★「お金の心配なく学 びたい」「内定取り消 しは許さない」全国 学生集会
13日(土)
午後1時30分 開会
午後4時10分 渋谷へアピールパレード
場所 東京大学駒場キャンパス
問い合わせ 042(572)6011(全学連)
お悩みHunter
口下手で就活うまくいかない
Q 就職活動中の大学4年の女子です。今年2月から会社訪問をしていますが、いまだに内定がとれません。私は口下手で、文章を書いたりする仕事が一番あっていると思い、出版関係の仕事を選びました。でも、訪問先では自分の気持ちを伝えられず、失敗ばかり。自己嫌悪でいっぱいです。(23歳女性)
真摯な態度で思い伝えてみて
A あなたは、口下手だから「自分の気持ちを伝えられず」就活がうまくいかない、と考えているようですね。
でも、本当にそうでしょうか。
私の経験では、必ずしも「口上手」な学生が内定をとっているようには思えません。口が上手・下手より、しっかりと自分を持っていることの方が大切ではないでしょうか。
就活では“素のままの自分”を自信を持って表現できる力のある学生が、好結果を出しているように思います。この力は就活だけでなく、これからのあなたの人生にとって大きな力になるでしょう。
では、「素のままの自分」に自信を持てるようにするにはどうしたらいいでしょうか。
人が自己嫌悪に陥るのは、自分の欠点や弱点、失敗にばかり目がいくからです。
「ないものねだり」ではなく、“あるがままの自分”を丸ごと受け止め、認めてやることです。
口上手でなくても、自分の思いを伝えようとする真摯(しんし)な態度や努力する心こそが、相手の心を揺さぶり、信頼感を高めるのです。
他人と比較することをやめれば、あなたの中に余裕が生まれ、多少の困難にもめげない挑戦心がわいてくることでしょう。
そんなあなたは自信にあふれ、輝いているはずです。就活にもきっと活路が開けるように思います。
教育評論家 尾木 直樹さん
法政大学キャリアデザイン学部教授。中高22年間の教員経験を生かし、調査研究、全国での講演活動等に取り組む。著書多数。■関連キーワード