2009年5月26日(火)「しんぶん赤旗」

北朝鮮の核実験

安保理決議・6カ国声明に違反


 北朝鮮による核実験は、国連安全保障理事会決議にも、みずから合意した六カ国協議の共同声明にも違反した暴挙であり、いま世界的な規模で広がりつつある核兵器廃絶に向けた新たな流れにも逆行するものです。


 今回の北朝鮮の核実験は、国連安全保障理事会の決議一七一八に対する明白な違反です。

 北朝鮮が初の核実験を実施した直後の二〇〇六年十月、国連安保理は、北朝鮮に再度の核実験や弾道ミサイル発射をしないよう要求する決議一七一八を全会一致で採択しました。

 同決議は、北朝鮮の核実験を「国際の平和と安全への明白な脅威」と認定した上で、北朝鮮に「核兵器と開発計画を、完全かつ検証可能で後戻りできない方法で廃棄」するよう要求。同時に、北朝鮮を含めた六カ国協議の参加国に、平和的な方法による朝鮮半島の非核化を目指す二〇〇五年九月の共同声明の履行に向けて対話を再開するよう求めました。

 北朝鮮は、同決議に対し、「安保理が中立性を完全に失った」などと主張。「核実験は自衛を強化する手段だ」として、決議を拒絶する立場を表明しました。

 しかし、米朝は対話を通じて非核化プロセスの再開に合意。六カ国協議も再開し、非核化「初期段階の措置」で合意した経緯があります。

 北朝鮮は、〇五年九月の六カ国協議共同声明で、「すべての核兵器および既存の核計画を放棄し、核不拡散条約(NPT)および国際原子力機関(IAEA)の保障措置に早期に復帰することを約束」したことを確認。他の五カ国とともに、「北東アジア地域の永続的な平和と安定のための共同の努力」を表明していました。

 北朝鮮による核実験強行は、国際社会に対するこの公約を一方的に破棄するものでもあります。

 北朝鮮は中央通信の発表で、今回の核実験の目的を「自衛的核抑止をあらゆる面から強化するための措置」だとしています。しかし核抑止力強化は、核兵器保有を正当化する論理であり、実際は緊張を激化させるもので、自国の安全を守れないことは明らかです。

核廃絶の機運に逆行

 広島、長崎の被爆者をはじめ日本の核兵器廃絶を求める声は、国際的な反核平和運動、非同盟諸国、新アジェンダ連合諸国とも連帯し、いまや世界の大きな潮流になっています。

 こうした中で、米国の核戦略を進めてきた元米高官からも核兵器廃絶に向けて行動をおこそうという呼びかけがあがり、ついにオバマ米大統領自身が「核兵器のない世界」の実現をめざして行動する核使用国としての「道義的責任」を表明するまでにいたりました。(四月五日のプラハでの演説)

 いま国際社会に求められているのは、この国際的な機運をいっそう強め、核兵器の恐怖から人類を解放し、核兵器を廃絶するための国際交渉を開始することです。

 ところが北朝鮮は「(今回の)実験の結果、核兵器の威力をより高め、核技術を絶えず発展させていくことができる科学技術的問題を円満に解決した」と誇っています。まさに核廃絶に向けた国際的な機運に対する挑戦そのものです。

6カ国協議に復帰を

 北朝鮮が六カ国協議に参加しないとする理由は「われわれの武装解除と体制転覆だけを狙う場と化した」というものです。

 北朝鮮は二〇〇六年にも、七月のロケット発射を非難する安保理決議に反発して六カ国協議への参加を拒否。同年十月に一回目の核実験を強行しました。

 六カ国協議の行方が危ぶまれましたが、米朝は対話を通じて非核化プロセスの再開に合意。六カ国協議も再開し、非核化の「初期段階の措置」、「第二段階の措置」へと前進させた経緯があります。

 六カ国協議の共同文書には、「朝鮮半島と北東アジア地域全体の平和と安定」(〇五年九月の共同声明)を実現する課題が包括的に盛り込まれています。各国の対話の呼びかけに応え六カ国協議の場に戻るべきです。


北朝鮮 核問題をめぐる動き

【2003年】
1月 北朝鮮が核不拡散条約(NPT)離脱を表明
8月 北京で第1回6カ国協議

【05年】
2月 北朝鮮が核保有を宣言
9月 6カ国協議で、北朝鮮の核放棄と履行原則を決めた共同声明を採択

【06年】
7月 北朝鮮がテポドン2号など7発のミサイル発射
    連安保理が北朝鮮を非難する決議1695を採択
10月 北朝鮮が核実験実施
     連安保理が、北朝鮮に対する制裁措置を含む決議1718を採択

【07年】
2月 6カ国協議、核放棄のための初期段階措置を盛り込んだ共同文書採択
7月 北朝鮮、核施設の稼働停止
10月 6カ国協議、核施設無能力化と核申告の履行を明記した共同文書を発表

【08年】
6月 北朝鮮が核計画を申告。原子炉の冷却塔を爆破
10月 米朝、核計画の検証手続きで合意。米は北朝鮮に対するテロ支援国指定を解除

【09年】
4月5日 北朝鮮がロケット発射を強行
  3日 国連安保理、北朝鮮のロケット発射を非難する議長声明を採択
  4日 北朝鮮が6カ国協議離脱と核抑止力の強化、核活動再開の方針表明。寧辺の国際原子力機関(IAEA)要員に国外退去通告
  5日 北朝鮮が使用済み核燃料棒の再処理に着手と発表
  9日 北朝鮮が安保理が謝罪しなければ、核実験実施や弾道ミサイル発射と警告
5月25日 北朝鮮が地下核実験に成功と発表



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