2009年5月17日(日)「しんぶん赤旗」

民主代表選

金権腐敗疑惑はどこに

小沢氏の「開き直り」を共有


 民主党代表選は鳩山由紀夫前幹事長を新代表に選出して終わりました。鳩山氏は代表就任記者会見で、西松建設の違法献金疑惑で国民になんら説明を果たしていない小沢一郎前代表について、「できるだけしっかりとしたポストについていただきたい」と、新体制で重要ポストに起用する考えを示しました。

 今回の代表選は西松疑惑での国民の厳しい批判を前に小沢氏が辞任に追い込まれたことによるものです。そうであるなら民主党としてこの金権腐敗疑惑の解明に正面から向かい、国民に明らかにするのは当然です。ところが民主党は、一番問われたことにまったく答えないままでした。問題をなんら解決しなかったどころか、矛盾をいっそう深めました。

擁護の先頭に

 そもそも小沢執行部の要である幹事長の職にあり、小沢氏の秘書の逮捕直後から「国策捜査」・検察批判を展開して小沢氏擁護の先頭に立ったのが鳩山氏です。同氏が小沢氏の後継として名乗りを上げること自体、国民の疑問・批判に背を向けるものでした。

 小沢グループの幹部議員の一人は「小沢は責任を取ったのではない。選挙のための政治判断で辞めた。だから鳩山には立候補の資格がある」とのべました。小沢氏は辞任会見(十一日)で「一点のやましいところもない」と「身の潔白」を強調しました。

 問題は、この開き直りの「論理」を鳩山氏が受け入れたことです。鳩山氏は出馬会見で、「(小沢氏は)挙党体制になるために職を辞された」、「政治資金規正法違反にはあたらない」(十四日)と述べました。ゼネコンから献金をもらって当然とする金権体質が、民主党全体のものといわれても仕方ありません。

責任あいまい

 対抗馬だった岡田克也氏も、党副代表でありながら、「小沢氏の自発的辞任を待つ」という態度で、その責任をあいまいにしてきました。

 民主党内からも「小沢氏と責任を共有するはずの鳩山氏と岡田氏の『二者択一』の選挙という構造自体がおかしい」、「西松問題を正面から解明する姿勢を示せなければ民主党の再生はない」という不満の声が出されていました。

 実際、選挙当日の政見演説で鳩山・岡田両氏は、西松建設の違法献金問題には最後まで一言も触れませんでした。記者団の質問に対しても、小沢氏個人の問題であるとし、党として解決の姿勢を示しませんでした。

 その根本には、企業団体献金が、カネの力で政治をゆがめる議会制民主主義の根幹にかかわる大問題だという民主的感覚の欠如があります。

 「友愛」を掲げた鳩山氏も、「みんなの幸せを後押ししたい」と述べた岡田氏も、深刻化する雇用情勢に対して、派遣切りをやめさせることや、派遣労働を原則禁止することなどの課題には触れず、「構造改革」を自民党と競い合ってきたことへの反省も口にしませんでした。「官僚支配」の背後にある大企業に正面からモノを言うことができないのは、企業献金の問題できっぱりとした態度が取れないことと無関係ではありません。(中祖寅一)


新代表の横顔 改憲派議連の顧問

 祖父は鳩山一郎元首相、父・威一郎氏は元外相の世襲政治家。弟の邦夫氏は麻生内閣の現総務相です。

 一九八六年、衆院議員に初当選し、自民党竹下派に所属。九三年、自民党を離党し、新党さきがけの結党に参加しました。細川内閣で官房副長官を務めました。九六年に旧民主党を結成し、菅直人氏と代表に就任。

 九八年四月に四党が統一した新しい民主党では、九九年九月から二〇〇二年十二月まで党代表、〇五年九月から〇九年五月まで前原・小沢両代表のもとで幹事長を務めました。

 〇五年二月、著書『新憲法試案 尊厳ある日本を創る』を出版し、「天皇を元首とする」「自衛軍を保持する」などと明記した独自の改憲試案を示した改憲論者です。〇八年三月には、自民、民主などの改憲派議員でつくる新憲法制定議員同盟の顧問に就任しました。


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