2009年5月1日(金)「しんぶん赤旗」
農地法「改正」案を可決
企業の参入に道を開く
衆院農水委
衆院農林水産委員会は三十日、企業による農業経営支配をまねく農地法「改正」案を一部修正のうえ、自民、公明、民主の各党の賛成多数で可決しました。
同法案は、「効率的な利用」を口実に、もうけ本位の企業による農業経営支配に大きく道を開くものです。
政府案では、現行法の「農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当である」(耕作者主義)との考え方を削除していました。自民、公明、民主の各党が提出した「修正」案は、「耕作者」という表現を一部復活したものの、政府案に盛り込まれた「利用権」の自由化という考え方はそのまま温存しました。家族経営中心の農業を解体し、食料の自給率向上や環境保全などに重大な障害を持ち込む「改正」の本質は変わりありません。
同法案は、農業生産法人にたいする企業の議決権拡大などを盛り込みました。農外企業による農業経営支配をいっそう容易にします。
日本共産党は「もうけ本位の農外企業に農地をゆだねるわけにはいかない」として、同法案に反対し、廃案を求めています。
解説
「修正」でも本質同じ
政府提出の「改正」案は、法律の目的から「農地は耕作者のもの」という考え方を全面的に放棄するものです。「修正」案は原案で削除されていた「耕作者」という言葉を復活し、「耕作者の地位の安定」を法の目的の一つに盛り込んでいます。農地制度の根幹である「耕作者主義」の全面的な解体に農村の現場や衆院の参考人質疑のなかで強い懸念が出され、一定の修正を余儀なくされたものといえます。
しかし、今回の制度上の見直しの中心である、農地の「所有権」は従来の規制を維持しながら、「利用権」についての規制を取り払う点はなんら変わっていません。農地に関する権利を、みずから農作業に従事する者かその協同組織(農業生産法人)にのみ認める原則を「貸借」については放棄し、「耕作者主義」を空洞化させるものです。
農外企業などが「機械を所有し」「必要な労働力を確保」して「効率的に利用」する形式を整えれば許可せざるをえない点でも、「もうけ本位の農外企業に農地をゆだねる」という法「改正」の性格は原案と変わりません。
「修正」案は、原案になかった、▽法人が「貸借」する場合には役員一人以上が常時農作業に従事することが必要▽農業委員会の許可に当たっては市町村が関与▽農地の利用状況について毎年報告する―などの条件を新たにつけ加えています。それ自体は否定されるものではありませんが、その運用を担う農業委員会や農村の現場から、実効性に大きな疑問が出されています。さまざまな事後チェックによっても、農外企業などに農地をゆだねる危険性がなくなるものではありません。
原案にはこのほかにも、農業生産法人の要件の見直しや小作地所有制限の廃止、農地の長期賃貸借制度の創設、標準小作料の廃止など現行制度を「改悪」する項目がありましたが、「修正」案にはそのまま残っています。
もともと今回の農地制度見直しは、農村の現場から出たものではなく、財界の要請を踏まえたものです。政府が口実とする耕作放棄地の解消は農地法の見直しでなく、農家経営が成り立つ農政に転換してこそ実現できます。
農地制度は農業や農村社会の行方に重大な影響を及ぼします。国民的議論と国会での徹底かつ慎重な審議が求められます。(日本共産党国民運動委員会・橋本正一)
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