2009年4月10日(金)「しんぶん赤旗」

侵略美化の中学歴史教科書

文科省また検定合格

「つくる会」が別会社から発行


 文部科学省は九日、二〇一〇年度から使われる教科書の検定結果を公表しました。日本の侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」(藤岡信勝会長)のメンバーが執筆した中学校の歴史教科書(自由社発行)が合格しました。

 合格した歴史教科書は日本の侵略戦争について、自衛のための戦争でアジアの諸国の独立につながったかのように記述。侵略と植民地支配を正当化する内容になっています。

 日本共産党国会議員団の石井郁子文部科学部会長は同日、「検定合格とした政府の責任は重大」とした談話を発表。子どもと教科書全国ネット21など三十四団体も、「『あぶない教科書』を子どもたちに渡してはならない」との共同アピールを発表しました。

 「つくる会」の教科書は現在、扶桑社が発行していますが、同会は扶桑社と〇七年に絶縁。新たに自由社から発行するとし、昨年検定申請しました。

 文科省はこの申請本に五百十六カ所の欠陥個所があるとし、審査要綱に基づき不合格にしました。自由社が修正して再申請。百三十六カ所の検定意見がつきましたが、再度の修正後、合格しました。

 今回の検定は主に中学校教科書が対象。中学では一二年度から新学習指導要領が完全実施されるため、合格した教科書は一一年度までしか使われません。自由社以外の各社は検定申請せず、現行教科書を継続発行します。扶桑社も現行の歴史教科書を引き続き発行すると表明しています。

 今回の検定ではほかに、これまで二度不合格になった高校の「生物II」の教科書一点が、三度目の申請で合格しました。


検定合格を認めた政府の責任は重大

日本共産党国会議員団文部科学部会長 石井 郁子

 日本共産党国会議員団の石井郁子文部科学部会長は九日、今回の歴史教科書の検定結果について次のような談話を発表しました。

 、本日文部科学省は、自由社発行の中学歴史教科書を検定合格としました。

 この自由社の教科書は太平洋戦争を「『自存自衛』のための戦争」と描くなど、扶桑社の「新しい歴史教科書」と同様、侵略戦争の美化の立場にたっています。侵略戦争と植民地支配への反省とその誤りの清算は、戦後日本が国際社会に復帰した際の前提条件であり、戦後の日本社会の原点です。それを否定するような歴史教科書が国内外からつよい批判をあびることは必至であり、検定合格とした政府の責任は重大です。

 、侵略戦争と植民地支配についての歴史の真実を知り、その反省の上に平和と民主主義の日本国憲法があることを学ぶことは、わが国の子どもたちが主権者として育ち、世界の人々と手をたずさえて生きていくうえでの大前提です。わが党は、今回の歴史教科書の検定合格をはじめ、「あの戦争は正しかった」とする歴史への逆流を許さないために、広範な国民と力をあわせて奮闘するものです。

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