2009年3月15日(日)「しんぶん赤旗」

主張

学費援助提案

高校生泣かさぬ国民の運動を


 日本共産党は十一日、学費が払えず高校を卒業・入学できない若者をださないための緊急提案を発表し国民的運動をよびかけました。

急速に悪化する事態

 たまたま当日夜、NHKテレビの番組「クローズアップ現代」は、「貧しくて学べない」を特集しました。ご覧になりましたか。

 登場した高校生の一人は、父が経営する自動車部品会社の受注が激減し、自宅は売却、一家で工場に暮らしています。ユニホームが買えず、大好きな部活動をやめました。勉強だけは続けたいと、片道二百円の運賃を節約して一時間以上かけ歩いて通学します。しかし新学期の授業料のめどがたたず、今の公的制度では救えません。

 この十年、貧困と格差がひろがり、こうした若者が増えています。しかも昨年来の経済危機による収入減や「派遣切り」で、事態はいっきに深刻化しました。私立高校の授業料滞納者は九カ月間で三倍、約二万五千人もいます。

 憲法は「ひとしく教育を受ける権利」(第二六条)を保障し、教育基本法は「経済的地位」による「教育上(の)差別」を禁じています(第四条)。高校卒業は、就職にとって事実上不可欠の条件となり、進学率は97%をこえています。家庭の経済的事情で退学する若者を一人もださないことは社会の使命であり、政治の大きな責任です。

 政府も日本共産党の質問に「何としても避けなければならない」「最大限の努力をする」と答弁しました(河村官房長官)。誰もが認める、国民的課題です。

 中退者を出さないために、やるべきことは特別難しいことではありません。まず、学費が払えなくなったら自動的に退学・除籍にするという、“悪魔のサイクル”を断つことです。子どもの一生、国民の権利にかかわる問題を商品の売買契約のように扱うのは間違いです。「滞納すれば卒業証書を渡さない」などの動きも問題です。

 全国には退学・除籍とせず、支払い猶予などで生徒を守る自治体や学校があります。やる気があればできることです。すべての自治体・学校での実施を求めます。

 同時に、そうして就学を保ちながら、学費滞納等を解決する経済的支援が必要です。

 一人ひとり相談に乗り、現行制度を駆使することも必要ですが、それではどうにもならないケースがあります。日本共産党はそのために、緊急の「高校生救済貸し付け」を提案しました。無保証人、無利子、高校生が将来一定の収入をえるまで返済猶予など、困っている人が借りられる制度です。利子補給の費用はわずかで、これも国、自治体がやる気になれば、ただちに実施できます。

社会のゆがみただそう

 現在の授業料免除制度は、公立向けも、私立向けも、都道府県で減免の対象や額に大きな差があります。奨学金や、家計急変・単親家庭への支援は、成績基準や支援のタイミングなど、困っている人に使いにくいものです。諸制度の拡充と改善をつよく求めます。

 問題の根底には、社会のゆがみがあります。世界が高校、大学の無償化に向かっているとき、自民党政治は、親に「世界一の高学費」を負担させてきました。誰もが安心して学べる社会を展望し、貧困の克服とむすんで、全国で運動を広げようではありませんか。



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