2009年3月4日(水)「しんぶん赤旗」

株買取法

与党・民主が改定案可決

公的資金で銀行救済

大門議員が反対討論


 参院財政金融委員会は三日、自民・公明両党議員が提出した「株式買取法改正案」を自民、公明、民主の各党の賛成多数で可決しました。

 日本共産党の大門実紀史議員は反対討論を行い、同法案は「株価引き上げ・安定対策」というが、実際には、「公的資金を使って特定の銀行、事業会社を救済するだけのものになりかねない」と主張しました。

 同法案は、「銀行等保有株式取得機構」による株式の買い取り期間を二〇一二年三月まで延長するとともに、銀行と相互に株式を持ち合っている企業の銀行株を、「機構」が先行して買い入れることを可能にします。

 採決に先立つ質疑で大門氏は、「株価の下落は、実体経済が落ち込んでいるせいだ」と指摘。雇用や国民の暮らしや中小業者の経営など「実体経済を引き上げる政策を打ち出すことが大事だ」と提起しました。また、公的セクターによる株式市場への介入が「市場経済のメカニズムを崩す」ことを指摘しました。

 これに対し与謝野馨財務・金融相は、株式買い取りの必要性は強調しながらも、「健全な経済を取り戻すことを忘れていろんな対策を講じることは正しくない」と述べました。

 また大門氏が、政府・与党が公的資金による市場からの株式買い上げを検討しているのではないかとただしたことにたいし、法案提出者の柳沢伯夫衆院議員(自民党)は、「勉強は怠らない」と否定しませんでした。


解説

株価対策 民主も競い合い

 自民、民主、公明などの賛成で可決した銀行等の株式等の保有の制限に関する「株式買取法改正案」は、米国発の金融危機の影響で上場株式が急落したことにより、含み損を大量に抱えた金融機関を救済し、また事業会社が保有する銀行株を買い支えることが狙いです。株式の値下がりにより発生した損失は最終的に国民の税金で穴埋めされます。

 銀行等保有株式取得機構が資金を調達するときの政府保証枠は二十兆円で、現行の枠組みの十倍になります。同機構による株式買い取り実績は、三大メガバンクなどわずか十行で97%を占める状況で、機構の役員六人のうち五人が大銀行の頭取・社長です。

 大銀行の代表が、銀行の保有株の買い取りを決定する構造で、まさに銀行の、銀行による、銀行のための救済法案です。日本共産党の大門実紀史議員は、「上昇した銀行株式を利益確定のために売却する際に機構が利用される」と批判しました。

 大門議員が指摘したように、そもそも市場で決まる株価は、実体経済の反映です。小手先ではない抜本的な景気対策なしに本当の回復はあり得ません。大門氏の指摘に、提案者の柳沢伯夫衆院議員(自民)も「株式市場対策で、株価をどうこうするということは、よほどの検討を経なければならない」と言わざるを得ませんでした。

 いま本当に求められるのは、雇用維持、失業者支援、社会保障の拡充と中小企業の仕事の確保、農業再生など、内需主導への転換を思いきって進めることです。

 民主党は、「世界的な金融資本市場の混乱が続く中、我が国金融システムの安定性を確保するために基本的に賛成」(討論)としました。質疑の中では同党議員から「株価対策のために日銀が株式の買い取りという政策を検討するべきだ」という主張まで飛び出しました。株価対策のために公的な資金投入を競い合う自民・民主両党の姿勢は重大です。(中祖寅一)


 株式買取法 正式名称は、銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律。銀行が保有する企業の株式を、銀行等保有株式取得機構が公的資金を使って買い支えることを定めた法律。自民、公明、保守(当時)の与党三党の賛成で、二〇〇一年十一月二十一日の参院本会議で可決・成立しました。同法では、買い取り期間は〇六年九月末までとされています。機構が買い取った株式が値下がりした場合、それによって発生した損失は、最終的に国民の税金で穴埋めされる仕組みです。


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