2009年2月21日(土)「しんぶん赤旗」
障害福祉報酬5.1%上げ
厚労省改定案 加算に一定要件
厚生労働省は二十日、障害福祉サービス事業所に支払う報酬を四月から全体で5・1%(約二百三十億円)引き上げ、一定の要件を満たす事業所に手厚く配分するなどの改定案を発表しました。5・1%の引き上げ幅は政府が二〇〇九年度予算案に盛り込んでいます。報酬改定は障害者自立支援法の施行後初めて。
改定案は、人材確保とサービス向上のためとして、介護福祉士や常勤職員を一定割合以上雇用するなどの要件を満たす事業所に対する報酬の20%加算などを新設しました。加算をとれるかどうかで明暗が分かれます。
事業規模の拡大が難しく経営が困難な中山間地域で提供されるサービスに対しては、報酬を一律に15%加算します。
利用者が予約をキャンセルすると報酬が支払われない「日払い制」への強い批判を受け、利用者一人につき月四回のキャンセルまで一定額を加算するとしました。しかし「月払い制」に戻すことは拒んだままです。
一般企業への就労に向けた訓練を行う就労移行支援については「成功報酬の色彩を強める」として、基本報酬の一部を就労の実績に応じて支払う加算へと振り替えています。本来の障害者福祉に相反すると批判されている、「成果」を求める姿勢の強化です。同省は改定案について意見を公募し、三月下旬に告示する方針です。
報酬の「日払い制」 障害福祉サービスを提供する事業所への報酬(市町村が九割支給、利用者が原則一割負担)の支払い方法は自立支援法のもとでサービスの利用日数にかかわらず一定額を月単位で払う「月払い制」から、利用日数に応じて日単位で支払う「日払い制」に変わりました。
解説
運動反映するが不十分
自公政権が強行成立させ二〇〇六年四月に施行された障害者自立支援法は、利用者に重い負担を課しただけでなく、障害福祉の事業所と労働者に大打撃を与えました。
1―1・3%の報酬引き下げ、利用者がキャンセルすると報酬が支払われない「日払い制」への変更、原則一割の利用料の「応益負担」導入による利用抑制。これらの影響で、事業所は一―四割もの減収となりました。
日本共産党の調査では、自立支援法の施行後に収入が減った事業所は97%に及びます。多くの事業所が利用者サービスの後退と労働条件の切り下げに追い込まれました。募集しても職員が集まらない事業所は六割近くにのぼり、存続すら危ぶまれる状況です。
今回の改定案で報酬が全体で5・1%の引き上げとなったことはサービス向上や人材不足の打開を求める運動の成果といえます。
しかし、「日払い制」を前提にした5・1%程度の引き上げでは現状の改善には不十分です。
しかも、要件を満たす事業所への加算を多用しているため、加算をとれない事業所は淘汰(とうた)されかねません。事業所間の競争が激化し、低所得者や介護度の高い利用者を敬遠する傾向が強まる恐れがあります。
利用者がキャンセルした際の加算の新設も要求の反映ですが、事業所の減収分をカバーするには十分ではありません。支払いを「月払い制」に戻すことが緊急の課題です。
報酬を上げるとそのまま利用者の一割負担に連動することも自立支援法の矛盾です。「応益負担」制度の廃止とともに、公費投入による賃金アップが必要です。
障害者にゆきとどいた支援をするためには現在の職員配置基準は低すぎます。改定案は職員の人数に応じて基本報酬の設定を細分化するなど一定の工夫も盛り込んでいますが、正規職員を中心に十分な職員を配置できる水準に報酬を引き上げることが求められています。(杉本恒如)
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