2009年1月9日(金)「しんぶん赤旗」

厚労省 保育「新たな仕組み」

国・自治体の責任放棄

党女性委員会責任者

広井暢子さんに聞く


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 厚生労働省が、保育制度改悪のための「新たな保育の仕組み」づくりを急いでいます。社会保障審議会少子化対策特別部会が第一次報告(案)「次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けて」を昨年十二月十六日に発表しています。日本共産党女性委員会責任者の広井暢子さんに報告案の問題点を聞きました。


 「第一次報告」(案)がしめす「新たな保育の仕組み」は、(1)児童福祉法にもとづく市町村の保育の実施の義務をなくす、入所希望者の“要保育度”は認定するが、その後は保育所と保護者の直接契約にゆだね、保育料もサービス量に応じた応益負担にして保育所が徴収する(2)児童福祉施設として決めている国の最低基準を緩和し、自治体ごとの基準にかえることも検討する、などとしています。

 父母や保育士、保育園経営者のみなさんから反対や危ぐの声がひろがったことから、厚生労働省は、目標にしていた二〇〇八年のうちに報告をとりまとめることは断念せざるをえませんでしたが、いま早い時期のとりまとめをめざしています。

「義務」を「関与」に

 現在の保育制度は、児童福祉法二四条によって、乳幼児が「保育に欠ける」場合は、「保育所において保育しなければならない」と定められ、市町村には保育の実施が義務づけられています。

 自治体が責任をもって、入所、運営にあたっていますし、保育料は保護者の収入に応じて決められ、市町村が徴収しています。施設の面積や職員数などは国の最低基準によって一定の水準が保障されています。

 「新たな保育の仕組み」は、こうした国と自治体が実施責任をもつ公的保育制度を、根幹からくずすことになります。

 少子化対策特別部会は、“要保育度”の認定や保育料の徴収などに市町村は「関与」するといっていますが、「関与」はあくまでも「関与」でしかありません。実施責任をはたすことにはなりません。

企業参入を本格化

 しかも、重大なのは、企業参入を本格的にすすめるために「新たな保育の仕組み」をつくろうとしていることです。

 これまで財界は、保育分野への企業参入をいっかんして要求してきました。そのために、「保育サービス提供者の間の競争を阻害している要因をのぞき、競争メカニズムを機能させることが必要」だとし、「現在の認可保育所制度をゼロベースで見直し」、「利用者が保育施設を自由に選択し契約を結ぶことのできる『直接契約方式』を導入」し、さらに株主への配当ができるようにすることなど、「規制緩和」を要求してきました。

 「新たな保育の仕組み」は、財界の以前からの要求を具体化したものです。

「改革」路線転換を

 そもそも待機児童、保育所不足など国民の保育要求にこたえられない状況をつくりだしてきたのは、保育制度にあるのではなく、政府がすすめてきた「構造改革」路線による保育予算の削減にあります。

 「構造改革」「三位一体改革」による地方財政の圧迫、公立保育所運営費の一般財源化などが公立保育所の廃止、民営化をすすめ、保育所建設を抑制してきたのです。現行制度や自治体に責任を転嫁し、制度改悪をすすめようとするのは許されません。

 父母や保育士、保育園経営者をはじめ国民のみなさんの反対をおしきり、子どもたちを企業のもうけのための「市場」にゆだねる保育制度の改悪をすすめる「報告」のとりまとめはやめるべきです。

 いま求められているのは、「構造改革」路線を転換し、国と自治体による公的保育制度の拡充、保育所の新・増設をはかることです。



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