2008年10月12日(日)「しんぶん赤旗」

解説

北朝鮮テロ指定解除

6カ国合意 履行の軌道へ


 米国が北朝鮮を「テロ支援国」に指定したのは一九八八年です。北朝鮮は八七年、大韓航空機爆破事件で多くの民間人を殺害しました。これを受けて米国は、北朝鮮を「テロ支援国」に指定。貿易・金融などの制裁措置が発動され、北朝鮮は米国の影響力の強い国際金融機関から融資を受けることもできなくなりました。

 北朝鮮は米国の措置を自国に対する「敵対政策」だと非難。指定の解除を長年、要求してきました。

 核問題の解決をめざし、二〇〇三年から始まった六カ国協議は〇七年十月、北朝鮮が寧辺の核施設を無能力化し、すべての核開発計画の申告を行う非核化「第二段階」措置で合意。北朝鮮のテロ支援国指定の解除も盛り込まれました。

 〇八年六月、北朝鮮は核計画を議長国・中国に申告。米国もテロ支援国指定の解除手続きに入りました。

 七月の六カ国協議首席代表会合では、双方の措置の完了期限を十月末とすることで合意。米朝は申告の検証方法で協議を続けたものの、合意には至らず、八月、米国がテロ支援国指定の解除延期を表明します。

 これに反発した北朝鮮は、無能力化作業を中断し、核施設再稼働の準備を始めるなど、非核化プロセスを逆戻りさせ始めました。

 米国は検証方法として、軍事施設を含むすべての核関連施設への自由な立ち入りとサンプル採取などを要求。これにはニューヨーク・タイムズ紙九月三十日付社説が「合理的な妥協が不可能なもの」と指摘するなど、米国内からも批判が出ていました。

 事態の打開に向け十月初め、米朝の首席代表が平壌で協議し検証手順・体制の内容で合意。六カ国協議の合意を履行の軌道に戻すきっかけとなりました。

 合意内容は、検証対象を寧辺の施設に限り、核兵器製造施設、実験場、ウラン濃縮活動などについては今後も協議を続けるというものだといいます。

 テロ支援国指定の解除は、日朝交渉にも影響を及ぼします。

 日本政府は、拉致問題を理由に六カ国協議で合意した対北支援への参加を見送ってきました。他の協議参加国から日本に合意の履行を求める声が強まっています。

 北朝鮮は、八月の日朝協議で合意した拉致被害者の再調査もまだ実施していません。非核化の進展を、日朝間の懸案(植民地支配の清算と核、拉致、ミサイル問題)の包括的解決につなげる必要があります。(中村圭吾)



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