2008年10月1日(水)「しんぶん赤旗」
主張
後期高齢者医療制度
根本が間違った制度は撤廃を
麻生太郎首相が二十九日の所信表明演説で、後期高齢者医療制度は「高齢者に納得していただけるよう」見直すと表明しました。
七十五歳になったとたん、長年にわたって保険料を納めてきた国保や健保から無理やり脱退させ、扶養家族からもはずして差別的な医療制度に押し込める―。
この制度の根幹こそが、お年よりに寂しい思いをさせ、国民の怒りを呼んでいる大もとです。「高齢者に納得していただけるよう」見直すというなら、後期高齢者医療制度は撤廃すべきです。
しがみつく自民、公明
政府・与党からも、七十五歳で線引きすることや保険料の年金からの天引きなど、制度の「抜本見直し」の声が上がっています。まさに制度の根幹に問題があると認めたに等しい議論です。
舛添要一厚労相は、「七十五歳以上の方の怨嗟(えんさ)の的、年齢で切ったというのが一番大きかった。そういうことをひしひしと感じた」と記者会見でのべました。後期高齢者医療制度を四月から強行する先頭に立ってきた舛添厚労相の責任は重大であり、真剣な反省を求めます。しかし、制度の責任者である厚労相が、こんな発言をせざるを得ないという事実は、この制度がもはや存続不能に陥っていることをはっきりと示しています。
お年より、医師会や自治体、労働組合など、大きく広がった世論と日本共産党の国会論戦が、ここまで政府・与党を追い込んできたことは間違いありません。
動揺しながらも、政府・与党は制度にしがみつこうとしています。麻生内閣の発足に当たって自民党と公明党が発表した連立政権合意は、「よりよい制度に改善する」と現行制度を続けることを前提にした方針を掲げています。
とくに、九月二十八日のテレビ討論に出た自民党の細田博之幹事長の発言は見過ごせません。細田幹事長は、「全国でも75%は保険料が下がった。高齢者は片方では優遇されている」とまで言って制度を擁護しました。
細田氏が挙げた数字は、負担増になる世帯を最初から除いた上、丸ごと負担増になる健保の扶養家族の二百万人を調査対象からはずした厚労省の不当な推計です。何より、後期高齢者医療制度の保険料は二年ごとに改定し、七十五歳以上の人が増加し医療費が増えるにつれて値上げする仕組みです。
保険料がどんどん上がっていく制度を押し付けておいて、「高齢者は優遇されている」と正反対に描くなど、国民を侮った許しがたい態度です。
「医療費が際限なく上がっていく痛みを後期高齢者が自分の感覚で感じ取っていただくことにした」。制度の開始前に厚労省が地方自治体の職員に説明したことは、高齢者に痛みを強いる制度の冷たい本質を端的に表しています。
年齢差別のない制度へ
政府が「後期高齢者」と呼ぶ七十五歳以上のお年よりは、戦争の苦労を背負い、戦後社会の再建に身をていした世代です。年輪を重ねたお年よりの豊かな知恵と経験は、社会の大きな宝です。
制度の根本から間違っている後期高齢者医療制度は撤廃すべきです。減らされ続けた国庫負担を元に戻し、年齢や所得による差別のない医療制度をつくるために力を合わせましょう。
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