2008年8月29日(金)「しんぶん赤旗」
厚労省・医学部定員増の提言
社会保障費抑制転換を
厚生労働省の「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会(座長=高久史麿・自治医科大学長)が、二十七日にまとめた中間報告で医学部定員の一・五倍化などを提言したことは、医師の大幅増が必要だという世論と運動を反映したものです。
これまで「医師は足りている」「医師が増えると医療費が膨張する」として、医師の養成数を閣議決定までして抑えてきた政府の姿勢が大きな誤りであったことを、政府の検討会が認めたものでもあります。
中間報告では、▽二〇〇九年度は、医学部定員(現在は約七千九百人)を、少なくとも過去最大の八千三百六十人程度まで増やす▽将来的には、現在より五割程度増加させる―という、増員の数値目標が示されました。
問題は、この目標を実現する財政的な裏づけが不明であることです。
検討会では、委員から、医学生を一人増やすのに年間一千万円の経費がかかり、医学部定員を一・五倍にした場合、最大で年間二千四百億円程度が新たに必要となる、との試算が出されました。しかし、その財源を手当てする方法は、示されていません。
検討会の委員からは「日本の医療費の対GDP(国内総生産)比はOECD(経済協力開発機構)加盟国中二十七位、教育費は二十九位だ。医師の数の増加だけでなく、医療費、教育費の増加を含めてビジョンを出すべきである」(嘉山孝正・山形大学医学部長)など、十分な予算投入を求める意見が出されました。
一方、政府は社会保障費の自然増分を二千二百億円抑制する路線を、〇九年度も続けることに固執しています。医師数増員の目標を実現するために、政府は社会保障費の抑制路線をただちに改め、必要な財源を責任をもって確保すべきです。(秋野幸子)
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